黄昏恋々
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朝の鍛錬を終えた実紅が、帰り支度を整えていると、
「実紅」
丁度錆兎が迎えに現れた。
「錆兎兄様……!」
嬉しそうにぱっと華やかな笑みを浮べ、一目散に錆兎へと駆け寄る実紅。
そんな彼女を錆兎は満足そうに微笑みながら迎え入れ、その頭にぽんと掌を乗せる。
「今日も頑張ったな」
そう声を掛けてやると、ほんのりとはにかむ彼女。
大切な妹弟子の可愛らしい反応。………妹弟子。
ふいと錆兎は実紅から視線を外し、
「出掛けるぞ。帰ったら支度をしろ」
「え、いいの?」
「ああ。今日はお前の行きたい所へ連れて行ってやる」
「やったー。ね、ね、折角だから、義勇兄様に頂いたお着物と髪飾りでお洒落してもいい?」
「駄目だ!」
「え……」
気付けば実紅の言葉に被せる形で遮ってしまっていた。
ハッと我に返って実紅を見ると、きょとんとした表情で錆兎を見詰めていた。
「………怒鳴って悪かった。俺が用意した着物があるから、今日はそれを着ろ」
「錆兎兄様……もしかして今のやきもちー?」
「莫迦な事を言うな」
「だってー」
心の内を見透かされたかのような発言に、内心でドキリとする。
だが、すぐさま冷静を装い無表情に返す錆兎。
実紅はといえば、澄んだ瞳で疑わしげに見詰めてくる。
分かっている。そこに他意などない事ぐらい。
「今日はね、私お誕生日だから、いっぱいお土産貰ったのー。なほちゃんと、すみちゃん、きよちゃんからは、綺麗なドングリ。伊之助君とわざわざ山で探してくれたんだって。嬉しいなー。カナヲちゃんからはラムネを貰ったの。あと、シャボン玉を見せて貰った!すごく綺麗だっの。アオイさんからは、手作りのお団子で、胡蝶様からは金平糖を頂いたの」
隣で楽しそうに、無邪気に語る彼女の声は、耳の表面を掠めて心の中には響かなかった。
寧ろ聞きたくなかったのかもしれない。
錆兎の想いは幼いあの日のそれとは既に形を変えてしまっているのだからーー