CRY FOR THE MOON〈序、1、2、3〉
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柱である無一郎と優秀な剣士である雪桜は互いに多忙を極めたが、合間を縫って逢瀬を重ねていた。
そんな中、無一郎は雪桜に髪飾りを贈った。
「よく似合うよ」
薄紅色を纏った桜の髪飾りは陽射しを受けて煌めいて、艷やかな黒髪と白い肌のコントラストをより一層美しく見せた。
「有り難うございます」
ほんのりとはにかむ雪桜は目が眩むほどに愛らしく、そっと目を細める。
思わず触れたい衝動に駆られて、そんな自身に内心で戸惑いながらも、雪桜に気取られぬよう表面上は表情を変えることなく何とか自制した。
⋯⋯だが、その望みは思わぬ形ですぐに叶うことになる。
「大丈夫?」
突然、ふらりと傾いだ雪桜の身体を受け止める。
「⋯⋯いつもの発作です。こんな時にごめんなさい」
「いいよ。そこの茶屋で少し休もう」
「はい」
無一郎は雪桜の肩を抱き、その身体をしっかりと支えながら慎重な足取りで茶屋へ向かう。
腕の中の彼女の身体は驚くほどに細く、頼りなくてーー今にも儚く掻き消えてしまいそうで、無一郎はほんの少しだけ支える腕に力を込めた。
ーー微かに風が吹いている。
忍びやかな音を聞きながら、無一郎は布団の上に身を起こす。
それと同時だった。
月灯りの射し込む窓から自らの鎹鴉である銀子が飛び込んできたのは。
艷やかな黒い羽毛を撫でながら、脚に結びつけられていた手紙を外す。
手紙に目を通して、その内容に、無一郎は衝撃を受けた。
その手紙の内容はーー
水沫雪桜が鬼化したこと。
そして五日後に処刑される旨であった。