CRY FOR THE MOON〈序、1、2〉
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ーーそれは現在から百年以上前の事。
かつて鬼という存在が在った。
彼らは人類にとって凄まじい脅威となりうる存在だった。
その多くは残忍な性質で、戯れに人間の尊厳を踏み躙り、その血肉を喰らう。
しかし人類とて、蹂躙されるがままではなかった。
ある一人の若者によって鬼の勢力に対抗する組織「鬼殺隊」が形成される。
そして時透無一郎は、かつてその組織に身を置いていた。
一体でも多く鬼を討伐するべく、任務に明け暮れる日々。
そんな日々の中で出会ったのが、水沫雪桜という少女だった。
彼女と初めて対面したのは、蝶屋敷。柱である無一郎が鬼との戦いで怪我をする事はほとんどなく、診察はもっぱら記憶障害に関する事で、そんな中訪れた蝶屋敷に彼女はいたのだ。
真っ白な羽織に華奢な身体を包み、隊服のスカートから覗く折れそうなほどに細い脚は隙間なく黒いタイツに包まれている。
診察室の丸椅子に腰掛ける彼女が滑らかに艶めく黒髪をさらりと揺らしてそっと此方を向いた時、小作りな白い顔の中で、長くたっぷりとした睫毛に縁取られた黒目がちの大きな瞳が酷く印象に残った。
吸い込まれそうな黒い瞳。
血の気のない白い肌の中で、ぽつりと咲いた紅い唇が、言葉を紡いだ。
「すみません、もう退きます」
ふらりと立ち上がる彼女は、今にも倒れてしまうのではないかというぐらい弱々しく見えた。
「見掛けない顔だね。新しく入った人?」
そんなつもりはなかったのに、気がつけば声を掛けていた。
「水沫雪桜と申します。以後お見知り置きを、霞柱様」
先程までのふらふらとした動きが嘘のように、彼女は見惚れるくらい綺麗な所作でお辞儀をして、診察室を去っていった。
それから暫く経った頃だった。彼女の噂が耳に入ったのは。
彼女はやはり入隊して間もないようだったが、階級は既に丙だという。
その秘密は彼女の出自にあった。
白桜の里。地図にも載らないような小さなその里は、鬼にとっては藤の花に次ぐ猛毒である白桜に囲まれ、代々鬼に対して辻斬りを仕掛けていた家系の集まりだと聞く。
白桜流という独自の呼吸を編み出し、多くの鬼を討伐してきた家系。
その家系の中でも彼女の強さは群を抜いており、無一郎と同様に、産屋敷あまねが直々に声を掛けてきたらしい。
そんな彼女と偶然に顔を合わせるのは、いつだって蝶屋敷の中だった。