CRY FOR THE MOON〈序、1、2〉
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
時透先輩に手を引かれ、帰路を進む。
血が止まりそうなほどの力で、きつく手首を掴まれて、雪桜は少し怖くなり、
「先輩、待って」
懇願するが、時透先輩は何も言わない。振り向いてもくれない。
こんな乱暴な扱いは初めてで、恐怖が募った。
「時透先輩……っ」
その名を呼ぶ声に涙が混じる。
すると漸く時透先輩は立ち止まってくれた。そう思ったのも束の間、突然強い力で引き寄せられて、身体が時透先輩の腕の中に閉じ込められた。
「……先輩……?」
戸惑いとともに込み上げるのは、好きな人に抱き締められている幸福感。
こんな状況なのに呑気な事だと自分でも呆れた。
「……ごめん」
だけど、次の瞬間耳元で響いた激情を押し殺したような低い声に、なぜだか心が締めつけられた。
「先輩……どうしたの?」
「雪桜」
雪桜の問いを遮るように、時透先輩が名前を呼んだ。
「……何?」
時透先輩は少しだけ腕を緩めて雪桜の顔を覗き込んだ。
怖いくらい真剣な瞳で此方を見つめて。
「僕の事を思い出して」
再びあの言葉を。
それは雪桜にとっては至極不可解で、この時初めて少しだけ、時透先輩が怖いと思った。