月に妖かし〈序、1〉
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「お前だけは許さねぇ」
操られた男の瞳が、憎悪に燃えていた。
「そうか……ならば掛かって来るがいい。私は何も恐れない」
すらりと刀を抜き放つ。
その刹那、爆発が起こった。
屋根が飛散し、瓦礫が武器を構えた男達を襲った。
屋根を爆破した事で、黴臭く淀んだ空気が澄んでいく。
これで操られた男達の無力化に成功した。
所詮は、暴力沙汰には無縁な連中が武器を持っただけの集団だ。
戸外では時透無一郎の指示により鬼殺隊が集結し始めている。
瓦礫に埋まった人質の保護を彼らに任せ、雛月は鬼の潜んでいるであろう場所を目指した。
分がないと判断した鬼は、逃走を図っていた。
こんな所で死ぬわけにはいかない。弟の敵は、必ず討つ。
切迫した思いに突き動かされ、鬼はひたすら気配を消して、床下を這い進んだ。
ーー 霞の呼吸 陸ノ型 月の霞消 ーー
刹那、広範囲にわたって斬撃があらゆる建材を切り裂いた。
目を見開くその先で、弟の敵がじっと此方を見据えている。
静かに佇むその姿を目にした途端、憎しみに駆られて鬼は叫んだ。
「これで勝ったと思うな!俺には血鬼術がある!たとえこの場で朽ちようと、俺の意識を宿した人間共が、必ずお前を殺す!」
「はったりだな」
「何……ッ!?」
「お前の血鬼術は意識を乗っ取る能力ではない。ただ操っていただけだ」
「何故そう言い切れる!?」
「意識を乗っ取るーーつまり意識の共有を図っていたのなら、私が屋根に爆薬を仕掛けたあの時に気付いたはずだ」
監視の目を掻い潜って屋根に爆薬を仕掛けるのは、雛月にとっては造作もない事だった。
だが雛月は敢えて監視の人間に手を出した。
この鬼の扱う血鬼術の本質を見極めるために。
「
「私に“意識を乗っ取る血鬼術”だと思わせるために、予め用意していた会話をさせた。
人質を取った者と、取られた者の会話は限られているからな。
たとえ自身が敗れても、私が神経を擦り減らすよう仕向けたかったんだろう?」
悔しげに顔を歪める自身を涼しい顔で見下ろす雛月を、睨み上げる。
「あの時お前は私の言葉に反応した。近くに潜んでいる何よりの証拠だ。そしてーー」
月光の下、黒刃がその刀身から切っ先にかけて鈍い光を放つ。
「逃走経路を絞った事が仇となったな。居場所を教えているようなものだ」
光が、斜め下から斜め上へと走った。
ーー 霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り ーー
両断された鬼の首が血飛沫と共に宙を舞い、やがては黒い塵となって飛散した。