恋し悟りし
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刀鍛治の里で上弦の鬼を単独で撃破し、負傷した無一郎は蝶屋敷にて療養していた。
付きっきりで看病をしてくれていたらしい美砂は、ベッドの傍らで居眠りをしている。
疲れが出たのだろう。
そっとその頭を撫でる無一郎。
「僕が守るから……君は死なせない」
決意を胸に言葉を投じた、……その時だった。
「じゃあ師範は私が守ります」
瞳を伏せたまま美砂はそう言って、眠たそうに目を擦りながらゆっくりと身を起こした。
寝ぼけ眼の割には、言葉はしっかりと響いた。
「起きてたの?」
「今目が覚めました」
「ごめん……起こしたね」
無一郎がそう言うと、彼女は笑みを浮かべた。
ふにゃあとした、無防備な笑顔。
彼女を守ってやりたい……心の底からそう思った。
「師範は柱で、責任も重くて。だけど、そんなに気負わなくて大丈夫ですよ」
「美砂……」
「師範には私がついてますから」
彼女が微笑う。
「!」
気が付けば、衝動的に。
その唇に己のそれを重ねていた。
無一郎はハッと我に返って身を離す。
「……ごめん、嫌だったよね」
手の甲で口元を押さえ、頬に集まる熱をやり過ごそうとした。
美砂はその手を取り、そっと剥がすとーー
ちゅっ……。
軽やかな音を立てて、彼女の唇が無一郎のそれに触れたのだ。
「師範は……」
瞳を見開く無一郎の視線の先で、美砂はにっと小さく笑みを浮かべていた。
「絶対私の事好きですよね?」
少し意地悪そうな笑い方ーー此方を試すような視線に、クラクラと目眩がする。
目の前の彼女にただただ翻弄される。
無性に悔しくなって、再びその唇に己のそれを重ねた。
「そうだよ。君が好き」
まっすぐにその瞳を見つめて言い切ると、美砂は俯いた。
「師範は柱で、強くて賢くて。何もかも規格外でまだまだ全然敵いませんけど……でも私、これだけは貴方に負けないってものが一つだけあるんです」
「何……?」
「貴方を好きっていう気持ちの強さです。これだけは世界一……ううん、宇宙一!大好きよ?無一郎くん」
思いも寄らなかった告白に一瞬理解が追いつかず、無一郎はその淡い碧色の瞳を大きく見開いて、ぽかんとしていた。
しかしその言葉は徐々に心へ染み込んできて、顔に熱が集まる。
「何言ってるの?僕が君を想う気持ちの方が強いに決まってるでしょ」
嬉しいはずなのに、つい憎まれ口を叩いてしまう。
美砂はそんな此方の態度を気にした風もなく、にこにことしている。
無一郎の大好きな、優しい瞳で。
「ずっと傍にいるね。無一郎くん」
美砂はそう言ってそっと小指を差し出した。
「約束」
無一郎はその手を暫しじっと見つめた。
……嬉しかった。ずっと片想いだと思っていたから。
幸福を噛みしめるように、強く小指を絡める。
「無一郎くんちょっと痛い」
「我慢して」
「えー」
唇を重ねながら密かに誓った。
ーー絶対に死なない。
魚尾美砂を守るのは、僕だけだから。