第七話 蝶屋敷
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無一郎はそっと沙羅の手に触れた。
その手は思いのほか大きくて、仄かな温もりを帯びていた。
無一郎の手が沙羅のそれを優しく包み、心のさざ波が徐々に凪いでいくのを感じた。
「君が無事でよかった。だから……」
もう片方の手が、沙羅の頬を撫でる。
「そんな泣きそうな顔をしないで」
長い睫毛に縁取られた淡い蒼色の瞳が大きく見開かれ、水膜が張る。
沙羅は涙を堪えるように、ぎゅっと瞳を閉じた。
無一郎はふっと一瞬微かに微笑んで、沙羅の身体を自らの腕にそっと閉じ込めた。
「ずっと傍にいられるなら僕が守ってあげられるけど……そうはいかないから」
無一郎はそう言って沙羅をそっと開放すると、その瞳を覗き込むようにまっすぐ見つめながら、
「絶対一人にならないで」
真剣な面持ちで静かに釘を刺した。
「きゃあああああああっ!!!」
ふいにけたたましい悲鳴が響いた。
樹里の部屋からだ。
無一郎と沙羅は互いに頷き合って、駆け出した。
部屋へ駆け付けると、樹里の遺体がベッドごと激しく燃えていた。
蝶屋敷にいた全員ですぐさま消火にあたる。
程なくして遺体は鎮火した。
「おかしいですね……」
しのぶが厳しい面持ちで呟いた。
鎮火してすぐさま火元を調べたが、原因はわからずじまい。
「これではまるで樹里さんの遺体が自然発火したとしか……」
その言葉に初夏はガチガチと歯を鳴らしながら震える。
「もういや……。樹里姉が怒ってるんだわ……!」
諦めずに周辺を探っていた沙羅は、黒焦げの布団を捲り、あるものに目を留める。
その時沙羅の鎹鴉である鈴仙が寄越した情報の中に、引っ掛かりを覚えた。
「真島さん」
「何だ?」
「明日少し案内してほしい場所があるのですが……」
「わかった。俺に出来る事なら、何でも言ってくれ」
「有り難うございます」
そうして翌日、沙羅達はある場所を目指した。