第七話 蝶屋敷
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ーー遠くからいくつもの声がした。
そうだ、私は……竹の束の下敷きになって。どうやら少しの間意識を失っていたらしい。
遠かった声が今では鮮明に聞こえる。
「有須サン、大丈夫か!?今、退かすから!」
「沙羅さん……っ!頑張って!」
「沙羅さん、霞柱様……!」
霞柱様……?そういえば、先程から背中がほんのり温かい。
まさかーー
瞳を開いて身じろいだ沙羅は、思いも寄らないものを目にする。
「沙羅……。大丈夫?」
声はすぐ近くから。吐息が触れそうな至近距離、無一郎がゆっくりと身を起こした。
その額から真っ赤な液体が顎を伝い、ぱたぱたと雫を落とす。
降り注ぐ竹の束から、無一郎は咄嗟に覆いかぶさり沙羅を庇ったのだ。
「師範ーーーっ!!」
あれから沙羅達は竹の中から救出され、負傷した無一郎は直ちにしのぶの元へ。
無一郎に怪我の治療を施し、しのぶが微笑んだ。
「もう大丈夫ですよ」
心配で堪らなかった沙羅は安堵からその場に崩れ落ちそうになったが、足を踏ん張って何とか踏み止まった。
「よかった……。有り難うございます、胡蝶さま」
深々と一礼する沙羅に、しのぶが微笑み掛ける。
しかしその笑みは、程なくして陰りを帯びた。
「もしかしたら傷が残るかもしれません」
「!」
「二針縫いましたので……」
「わかりました」
動揺の欠片もない涼しい顔で、無一郎が答える。
それとは対照的に、沙羅の表情は重く沈んでいた。
「有り難うございました」
二人で謝辞を述べて、診察室を後にする。
時透無一郎の顔に傷を作ってしまった……。それは前髪の生え際から1cmにも満たない程度のものであったが、沙羅は悔しくて堪らなかった。
無一郎のお蔭で沙羅は無傷だ。
耐えて
これは沙羅が自身に課した誓約であった。
本来なら守るべき相手に逆に守られてどうするのだ。
「沙羅」
静かな声音に名を呼ばれ、沙羅はハッと顔を上げた。