第七話 蝶屋敷
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「それは嫉妬ですね」
柔らかく微笑みながらしのぶが言った。
廊下で偶然出会したのだ。
沙羅が弱冠十四歳(まだ誕生日がきていない)にしてあまりにも人生に疲れた顔をしていたので、しのぶは半ば無理矢理自室へと連れ込んで、尋問したのである。
「やっぱりそうですか……」
彼の想いは知っていた。以前正面切って伝えられた事があるから。
しかしその想いに応える事は、出来ない。
一気に重たい気分になる。それが思いっきり表情に出ていたのだろう。
しのぶは苦笑して、
「時透君を見ていると……」
静かに語り出したので、沙羅は顔を上げる。
慈愛に満ちた笑顔がそこにはあって。
「沙羅さんに焦がれてやまない気持ちが伝わってきます」
「…………」
「きっと不安なのでしょう」
「……不安?」
思ってもみなかった言葉に思わずきょとんと問い返すと、しのぶが頷く。
「焦がれてやまない貴女がーー今にも誰かに取られてしまいそうで」
「真島さんは私を異性として意識していません」
寧ろ彼はーー
「それでも……不安なのでしょう」
しのぶはその長い睫毛を伏せて、淡く微笑む。
慈愛に満ちたその笑みを見つめながら、沙羅は暫し逡巡し、やがて顔を上げた。
「師範……」
縁側に腰掛けてぼうっと空を眺めている無一郎に、そっと声を掛ける。
端正な顔がゆっくりと此方を向いた、次の瞬間。
「沙羅!!」
酷く蒼褪めた顔で無一郎が叫んだ。
「有須サン、危ねぇ!!」
ブチブチッ……、と繊維状の何かが断ち切れる音がして、そちらへ目を向けるとーー
気付いた時には既に、大量の竹の束が、沙羅に向かって降り注いでいた。