第七話 蝶屋敷
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蝶屋敷の中庭に、大量の竹の束が数本の縄で束ねて立て掛けられていた。
竹の束は長く先は鋭く斜めにカットされていて、それは沙羅の身長をゆうに越していた。
竹の束を見上げながら、きっと何かの訓練に使うのだろうと沙羅は考えた。
……蝶屋敷での怪異は未だ続いている。
停電の頻発、電話の雑音、テレビの雑音や色ムラ、ひどい家鳴り、ラップ音などーー
これらは樹里の祟だと、初夏はすっかり精神を擦り減らし疲弊していた。
仁成も、表にこそ出さないが相当に参っている様子だった。
沙羅は一連の怪異について調べるうちに、ある一つの事実に気が付く。
「妙ですね」
「何がですか?」
柔らかく問い返すしのぶに、沙羅は自らの考えを明かした。
「霊障というには、怪異が電気系統に偏っている事が気になります」
「そう言われてみれば……」
「胡蝶様」
「何でしょうか?」
「後で配電盤を調べさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ」
「有り難うございます」
「此方こそ、是非お願いします」
空から一羽の鴉が舞い降りた。沙羅が手を伸ばすと鴉はその手首に留まる。
鴉の正体は沙羅の鎹鴉の鈴仙・優曇華院・イナバだ。
鈴仙は自らが調べてきた事を沙羅へと伝えた。
「有り難う、鈴仙。貴女がいてくれてとても助かるわ。もう一仕事、頼める?」
沙羅が微笑むと、鈴仙は軽く羽ばたいて肩へと移動し、その頭を沙羅の頬へ擦り寄せた。
「お願いね」
鈴仙は高らかに一声鳴いて、大空へと羽ばたいていった。
「私は聴き込みに行って来ます」
しのぶへ一礼をして、踵を返したその時だった。
「沙羅さん」
不意に呼び止められた。足を止めて振り返ると、しのぶは平生の柔和な笑みをといて、真剣な面持ちで此方を見つめていた。
「今回の事は貴女に感謝しなければいけませんね。アオイに代わって礼を言います」
「いえ」
「ですが疑問も残ります」
「何でしょうか」
「何故、アオイの為にそこまで?」
「…………」
しのぶの疑問はもっともだった。
沙羅は少し思案に耽るように半眼を伏せる。
言葉を探しているのだ。
沙羅さん……と、促すように名を呼ばれ、沙羅は一度瞳を伏せるとしのぶの方へと身体ごと向き直った。