第七話 蝶屋敷
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「いやーーーっ!樹里
仁成にしがみつき、壁を指差す。
その先を視線で辿ると、壁に苦悶の表情をした人の顔のような染みがあった。
ひっ、と喉が引き攣ったような声を漏らす神崎アオイ。その後ろで悲鳴を上げて互いに抱き合うなほ、すみ、きよを宥めるしのぶ。
沙羅は壁に近付き、その染みを観察しながらごく静かな声で言った。
「落ちついて下さい。シミュラクラ現象です」
泣いているなほを抱きしめ自身も震えているすみの背を撫でるきよもまた涙目で、不思議そうな視線を沙羅へ投げかける。
神崎アオイも、自身の腕の中で震える初夏を宥めながら仁成も、怪訝そうな顔をしている。
「シミュラクラ現象?聞いた事がないです。何ですか、それは」
しのぶが柔らかな声音で問い掛ける。
「シミュラクラとは“人物を表現、または模写したもの”を意味する言葉の事です。
人間は敵か味方かを判別するために、まず相手の目を見る習性があると言われています。
目と口は逆三角形に配置されているため、点や線が逆三角形に配置されている図形を見ると、脳が顔だと判別してしまう現象を言います。
出血の具合から見て樹里さんは死後に刺されたものと思われます。
この壁に付着した血液は、明らかに自然に飛び散ったものではない。
となればこの染みは、人為的に創られたものーー恐らくはこの密室を作った人物の仕業かと思われます」
なるほど……そういう事でしたかと、柔らかく相槌を打つしのぶの顔にはいつものような笑顔はない。
しかし、対応もその語調も冷静な上に柔らかく、樹里が殺害され内心の動揺を押し殺していた沙羅の心を、幾分か落ち着かせてくれた。
沙羅は仁成の腕の中で未だ震えている初夏に視線を向ける。
「
「犯人じゃないって……どうしてそんな事が分かるのよ!?」
「此処から中庭まで。どんなに急いだとしても八分弱は掛かります」
「……測ってたの?」
「ええ。しかし初夏さん、貴女が叫んでから全員が駆けつけるまでに掛かった時間はおおよそ五分前後。……あくまでも体感ですが。
つまりーー」
「此処にいる全員にアリバイがある」
しのふが静かにそう言うと、沙羅は頷く。
「しかもこの部屋には鍵が掛かっていた。窓も確認しましたが扉と同様に。この部屋は密室です」
「中庭に急ぐだけではなく、鍵を掛ける時間も必要になる、というわけですね」
しのぶの言葉に、沙羅は再び頷く。
「それに調理をしていたアオイさんが怪しいと言うのなら、それを手伝っていた私も怪しいはずです」
沙羅の発言に周囲か騒然とする中で、初夏はまるで信じられないものを見るかのような瞳をしてーー
「何よ……」
震えるその唇から言葉か溢れた。