第七話 蝶屋敷
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ーー2、賭けと思索
窓灯りにぼんやりと照らされた真島樹里は、肌は蒼白くて血の気はなく、またその瞳は生気を宿していなかった。
呼吸も完全に止まっておりーー彼女は亡くなっていたのだ。
遺体となって発見された樹里を前に皆が騒然とする中で、有須沙羅は極冷静にその声を投じた。
「これは刺殺ではありません。毒殺です」
それまで樹里の兄である真島仁成にしがみつき泣き崩れていた初夏が、不信感も露わに沙羅の方を振り返る。
「……どうしてそんな事が分かるのよ?」
その声は震えていた。
沙羅は冷静に続ける。
「樹里さんの着衣の裾に……ほんの僅かですが黒褐色の染みがあります」
「それが何だっていうの!?」
「恐らくこれは、尿ではないかと。尋常ではないその色に動揺し、付着したものと思われます」
「やめてよ!そんな……、樹里
「犯人を突き止める為には必要なことです」
「……っ!」
「死因は恐らくパリトキシン様毒」
皆が固唾を呑む中で、しのぶが口を開いた。
「ミオグロビン尿症ですね」
「その通りです。パリトキシン様毒を摂取すると、麻痺や痙攣などの神経症状、呼吸困難や不整脈、腎機能障害等を引き起こします。
パリトキシン様毒は細胞のナトリウム流入を促進する事で、筋融解症状を起こす。
心機能の阻害や骨格筋の壊死が起こり、これを横紋筋融解症と言いますがーー結果、溶けた筋組織が尿中に溶け出し、尿が黒褐色に変色するミオグロビン尿症を引き起こすんです」
「それなら、犯人は神崎さんよ!!」
初夏の叫びに、全員の視線が神崎アオイに集まる。
「そうよ……、そうとしか考えられないわ!」
「待って下さい。何故、アオイさんが犯人だと?」
「その毒って魚に含まれる毒でしょ!?だったら、この蝶屋敷の食事管理をしてる彼女しか考えられないわ!」
初夏、と嗜める仁成の腕の中で尚も激昂し彼女は喚く。
「さっさと自白しなさいよ!警察に行ってよ!樹里姉を返してよ!!」
「わ……私じゃない……。私は殺してません!!」
「嘘よ!!貴女以外に誰がいるっていうの!?」
神崎アオイを糾弾していた初夏が、次の瞬間、突然悲鳴をあげた。