第七話 蝶屋敷
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「師範、今からお時間はありますか?」
「まぁ……あるにはあるけど」
「胡蝶様」
「何でしょう?」
「台所をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ」
「有り難うございます。……という訳ですので師範、今からご用意しますから、こちらで召し上がっていって下さい」
「うん……分かった」
そこまで告げると踵を返して玄関へ向かう沙羅。
「沙羅さん、どちらへ?」
「買い出しへ行ってきます」
「蝶屋敷の食材を使ってくれて構いませんよ」
「いえ。アオイさんにも材料の予定があるでしょうから。計画を狂わせてしまう訳にはいきませんから」
「あらあら。真面目ですね」
「行って参ります」
「気を付けて」
「有り難うございます」
沙羅の背中を見送る無一郎の隣に立ち、しのぶは優雅に微笑んで。
「沙羅さんご自身は買いかぶりだと仰っていましたが……」
淡い碧色の瞳がスッとしのぶの方へと向けられる。
「貴方といいカナヲといい……やはり彼女は止まってしまった心を動かす“何か”を持っているのでしょう」
無一郎は視線を沙羅が出て行った玄関へ戻し、
「……そうかもしれません」
やがてゆっくりと瞳を伏せた。
買い出しから戻ると、台所にはやはりアオイがいた。
「少し台所お借りします」
「いいですよ」
アオイは漫画やアニメでの印象通りハキハキとした物言いの、利発そうな少女だった。
クス…とこっそり穏やかな笑みを零しながら、買い物袋をおろすと、
「わざわざ買い出しに行って来たんですか?」
不思議そうな眼差しでアオイが問うてくる。
「はい」
と素直に答えると、
「ここの食材を使ってくれて構いません。好きに使って下さい」
と気遣いの言葉が返ってきて。
「お気持ちは有り難いのですが、アオイさんにも計画があるかと思ったので。私や……特に師範の分は、予定外の事ですから」
沙羅がそう言うと、アオイは少し驚いたような顔になり、やがて穏やかに目を細めた。
「真面目ですね」
「普通です」
「お気遣い有り難うございます」
「いえ」
二人は微笑み合い、和やかな空気の中料理を進めた。