第七話 蝶屋敷
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ーー1、殺人事件
ついに沙羅が蝶屋敷へ出立する日がやって来た。
「それでは、行って参ります」
彼女が霞柱邸を発つ頃にはすっかり日が暮れていた。
「何もこんな時間まで残らなくても良かったのに」
「こちらでの鍛練が一段落してからで構わないとの事だったので」
「まぁ向こうが良いならいいけど」
「師範」
「何?」
「この度は急な勝手な申し出を受け入れて下さり、有り難うございました」
敬意を込めて深く頭を下げる。
「うん……君の突飛な行動にも、いい加減慣れたから」
暖かな声音に顔を上げると、至極柔らかな笑顔が此方を見下ろしていた。
「いってらっしゃい、沙羅。頑張っておいで」
よく通る低い声音が宵闇に調和して優雅に響く。
暫くはこの声を聞く事もなくなるのだと思うと、ほんのりとした寂しさが沙羅の胸を甘く締め付けた。
蝶屋敷へ向かい暫く歩いていると、一羽の手負いの鴉が助けを求めて飛んできた。
淡い月灯りを反射して、細めた沙羅の瞳が鋭く光る。
鴉の導くまま、沙羅は駆け出した。
林の奥に三人の男女が一体の鬼と対峙していた。
一人は手負いの少女で、もう一人の少女はその傍らで泣き喚いている。
青年は二人の少女達を庇うように前に立ちはだかり、泣きじゃくる少女へ叫んだ。
「アイツは俺が何とかする!お前は樹里を連れて逃げろ!」
「やだ……っ、ひー君!!」
「いいから、行け!」
鬼はニタニタと厭な笑みを浮かべながら、大きく鋭い鉤爪の付いた伸縮自在の腕を青年に向けて放った。
「ひー君!!!」
青年が刀を構えた、次の瞬間。
ガキィィィィンーー!!!
鉤爪を刀で受け止めたのは、青年ではなかった。
「だ……、誰……だ?」
月灯りに淡く靡く亜麻色の髪ーー鬼を鋭く見据える冴えた蒼の瞳。
異国の人形のような少女が突然介入してきたのだ。
少女は鬼の腕を弾くと、間合いを取り刀を構えた。隙のない構えだ。
「随分別嬪が来たじゃねぇか。美味そうだあ」
すぐさま鬼が攻撃を仕掛けてくる。
伸縮自在の腕による連続打撃。
少女は連続のバク転で難なく身を躱す。彼女が避けた後には幾つもの穴が地面に穿っていた。
その様を眺めて少女は何とも妖艶な笑みを浮かべ、
「穴を掘るのが趣味なの?」
クスッと揶揄してみせた。
「このガキィィッ!!」
鬼が激昂する。