第六話 誕生日
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「とても美味しい……これ、何ていうの?」
「ハンバーグです」
「こっちの麺は?」
「ナポリタンと言います」
「凄いね。どれも美味しい」
平生はもっと噛みしめるように食べる無一郎が、何だか凄い勢いで食べている。
よかった……お口に合ったようで何よりだ。
子供はだいたい洋食がお好き。
ついつい口元を緩めてしまう沙羅を、無一郎が不満げに睨んだ。
「何か失礼な事考えてない?」
「あ・分かります?」
「……少しは否定しなよ」
こうして食事は和やかに進んでいった。
「師範。残念なお知らせが」
「何?」
「食に予算を割いてしまったあまり、贈り物が……」
「別にいいよ」
「手作りになってしまいました」
「!」
「やっぱり要らないですか」
「見せて」
食い気味に言われ、若干身を引きつつ、沙羅は後ろ手に隠していた贈り物を出してみせた。
「綺麗だね……これは?」
「ミサンガといいます」
「君が作ったの?」
「はい」
「器用だね……」
それは寒色系の糸で編み込まれた見事な出来栄えだった。
「どうやって使うの?」
「手首に巻き付けてーー願い事をするんです」
「願い事?」
「はい。それが自然に切れた時、願いが叶うと言われています」
「ふぅん」
淡い碧色の瞳がじっと此方を見つめるので、
「私関連以外の願い事でお願いします」
すかざす釘を刺す沙羅。
無一郎は手の中のミサンガに視線を落とす。
「師として君の安寧を願ってはいけないの?」
「! ……っ」
沙羅はそっと半眼を伏せると、ミサンガを無一郎の手首に結びつける。
「せっかくだからご自身の安寧を願って下さい。……そうすれば、」
沙羅は自らの手首を無一郎へ見せる。
その手首には、淡いピンク系とブルー系の糸で編み込まれた無一郎と揃いのミサンガが巻かれていた。
「私と願いは同じですから。師範……誕生日おめでとうございます」
沙羅の願いは一つだけだ。
無一郎の黒死牟・無惨戦の勝利ーーそしてその後の健やかで穏やかな人生だ。
「沙羅ーー」
突然、無一郎に抱きしめられた。否、抱きつかれたといった方が正しいのかもしれない。
その勢いを受け止めきれず、沙羅は無一郎諸共に、畳にひっくり返ってしまった。
二人の髪が畳に広がり、混ざり合う。
「………師範、」
「ごめん」
抗議の声を遮るように謝られて、何も言えなくなる。
「何もしないから、もう少しだけこのままでーー」
背に回された腕にぎゅうっと力が籠もり、多少の息苦しさを覚える。
……が、不思議と不快ではなかった。
力強い腕も、伸し掛かる重みと温もりも、この息苦しさも。
だけどーー
沙羅は自らの想いに蓋をするように、その長い睫毛をゆっくりと伏せるのだった。