第六話 誕生日
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蜂蜜を少し分けて欲しいと甘露寺に頼んでみた。
無一郎の誕生日を祝うために、デザートとして蜂蜜プリンを作りたいのだ。
時代は大正。砂糖が高価というのもあるが、風味づけとしてバニラを探してみたものの、店には売っていなかったからである。
そこで蜂蜜を使って風味づけをしようという作戦を立てたのだった。
「いいわよ!そういう事なら、いくらでもあげちゃう!」
どうやらキュンとしたらしい彼女は、快諾してくれた。
「有り難うございます。お礼に甘露寺様にも丼ぶりサイズで献上します」
「えーーーっ!?ほんとぉ!?」
頬を薔薇色に染めて、瞳を輝かせる彼女。
本当になんて可愛らしい人なのか。
「…………」
もし私もこれぐらい可愛げがあればーー師範はもっと幸せだったのかな。
ふとそんな考えが脳裏をよぎった。
恋柱邸を後にして、午後の鍛練へ戻った。
雑念を振り払うが如く凄まじい集中力をみせた沙羅は、無一郎に褒められる。
後ろめたさと居心地の悪さを感じながらも、今度は夕飯作りへと。
本日のメニューはナポリタンとハンバーグとエビフライに自家製タルタルソースの盛り合わせプレート、トマトとレタスを添えたポテトサラダ、冷製野菜スープ、そしてデザートに蜂蜜プリンの予定だ。
つまりは洋食である。
因みにパスタは手作りだ。店に乾麺が見当たらなかったからである。
“無ければ作ればいいじゃなーい”という考えのもと、強力粉と薄力粉、卵、打ち粉であっという間にモチモチの生パスタの完成。
手先が器用な事が幸いした。
そうして夕食は予定通りに完成した。
しかしここで沙羅は急に不安になる。
無一郎の好物はふろふき大根。つまり超絶あっさり系の和食だ。
果たしてこのコッテコテの洋食の数々が、口に合うのだろうか……。
食卓へついた無一郎は案の定、少しだけ面食らった顔をした。
「へぇ、洋食?」
「はい……」
冷汗が止まらなくなる沙羅。
どうしよう、最後の最後でもし口に合わなかったら……。
ざっとカトラリーの使い方の説明をすると、無一郎は難なくマスターした。
そして、緊張の瞬間ーー
「……!」
沙羅の視線の先で、淡い碧色の瞳が大きく見開かれた。
その瞳が、キラキラと輝く。
沙羅の全身から、ほっと力が抜け落ちた。