第五話 困惑
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霞柱邸へ帰宅後すぐに、無一郎の部屋で正座させられての説教タイムが始まった。
「ちょっと無防備が過ぎるんじゃない?もっと警戒心持ちなよ。君に隙があるから、ああいう連中が寄って来るんだよ」
「お言葉ですが、師範」
「口答えしないで」
「…………」
お言葉ですが、師範。下心を持って近寄って来る輩とそうでない人との区別ぐらいはつきます。
という反論は、どうやら聞く耳を持って貰えないようだ。
こうなると一方的だ。そして一方的な話をただ聞かされるだけの時間というのは睡魔を誘う。
さらにまずい事に、少年ぽいあどけなさの残る声はとても綺麗で、そのよく通る柔らかな低い声音は耳に心地良い。
説教とはいえずっと聴いてられる。これはもはや子守唄だ。
でも……ダメ。
耐えろ。
耐えるのよ、沙羅。
ここで眠ってしまったら、お説教が長引くのは確実。
耐え……。
ZZZ……。
ZZZ……。
「ねぇ、聞いてるの?」
ハッと意識を取り戻し無一郎の方へと視線を向けると、彼はじっとりと据わった眼差しで此方を睨んでいた。
当然である。
「申し訳ありません」
流石に土下座でもするべきか考えていたその時、とん、と肩を押された。
そうして反転した視界に写ったのは、天井だけではなかった。
「師範……?」
平生はぼんやりとした淡い碧色の瞳が、どこか熱っぽく真っ直ぐに沙羅を見下ろす。
「無防備過ぎ。僕の事……男として見てないの?」
囁くようにそう言って、身を屈めて顔を覗き込んで来るので、沙羅の視界が彼の長い髪に埋め尽くされる。
何処か透明感のある長い黒髪。毛先が碧色に透けた、綺麗なーー
「…………。無理強いはしないのでは?」
「気が変わった」
「変わらないで下さい」
「その冷静さが、いつまで保つかな」
「困ります」
「困ればいいんだ」
「何言って……んむっ」
沙羅が話している間にも端正な顔が間近に迫り、唇が、唇で塞がれた。
反射的に閉じた口を指でこじ開け、舌が口内へ侵入してくる。
流石に焦りを感じて必死になって藻掻くが、力の差は歴然で、びくともしない。
その上わざと体重をかけるようにして伸し掛かられている為、身動きが取れない状態だ。
「んん……」
いつの間にか舌が絡め取られ、ちゅくちゅくといやらしい音を立てて弄ばれる。
しかも至極厄介な事に、絶妙な強弱と緩急を付けて口内を刺激してくるのだ。
頭の芯がボーッとして、下腹部が鈍い痺れと熱を持つのが分かる。
次第に力が抜けて、抵抗する力も弱々しいものへと変わっていく。
・・・・
こういう経験なんてないはずなのに、どこでこんなの覚えてくるのよっ……!
まずい……このままじゃ……押し切られる………。
快楽が脳の中枢まで侵食して、理性が分解しかけた、その時たった。
ゴリッと固く熱を持った何かが身体にあたり、沙羅は一気に正気を取り戻す。
仕方なく、口内を侵食する舌に強かに噛み付いた。
「……っ」
手の甲で口元を押さえながら無一郎が身を離した。
その一瞬の隙をついて沙羅は無一郎に思いきり頭突きをかますとその場を逃げ出したのだった。