第十話 遊郭
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「うううう!!また頸斬られたぁ!!糞野郎!!糞女!!絶対許さない!!悔しい、悔しい!!なんでアタシばっかり斬られるの!!」
首を押さえて甲高く喚く堕姫の声が響く中、妓夫太郎は宇髄を見据えながら冷静に口を開いた。
「お前もしかして気付いてるなぁ?」
宇髄もまた妓夫太郎を見据えて、
「何に?」
と、挑発的な笑みを浮かべる。
「さっきの指文字はその指示かぁ」
妓夫太郎の目線が一瞬だけ此方を向く。御名答。物語の展開を知っている以上、その事実は沙羅も承知していたが、当然黙っていた。
「⋯⋯気付いた所で意味ねぇけどなぁ。お前は段々と死んでいくだろうしなぁあ。こうしている今も俺たちはジワジワ勝ってるんだよなああ」
しかし次の刹那瞬間、別な方向から声がした。
「それはどうかな!?」
崩れた壁の大穴から現れたのは、伊之助と善逸。
「俺を忘れちゃいけねぇぜ、この伊之助様とその手下がいるんだぜ!!」
元気いっぱいに刀を振り回す伊之助の横で、眠ったままの善逸は、凛々しい寝顔に鼻提灯を拵えている。
「何だ?コイツら⋯」
訝しげに呟く妓夫太郎と、見覚えのある顔にハッとする堕姫。
伊之助達を静かに見つめる宇髄の前に降り立ち、刀を構えて立ち塞がる炭治郎。
ーーこれで漸く全ての戦力が揃った。
「テメェら⋯派手な登場じゃねぇか。気に入ったぜ!!」
宇髄と沙羅もまたそれぞれ得物を構え、攻撃体勢に入る。
「下っぱが何人来たところで幸せな未来なんて待ってねぇからなあ。全員死ぬのにそうやって瞳をきらきらさすなよなあぁ」
苛立ちも露わに妓夫太郎が、ボリボリと自らの顔を引っ掻く。
宇髄の傍に控えていた沙羅は気付く。そして宇髄も恐らく気付いている。
炭治郎の刀を持つ手が震えていることに。
疲労、混乱、戦慄⋯⋯全てが綯い交ぜになって萎縮しかけているのだ。
それでも勇敢な彼は、自らを奮い立たせている。
「勝つぜ、俺たち鬼殺隊は」
突如、声高に宇髄が宣言した。それが一瞬にして空気を変えた。
「勝てないわよ!頼みの綱の柱が毒にやられてちゃあね!!」
すかさず堕姫の嘲る声が響く。
毒、の言葉に炭治郎が顔色を変えて宇髄を振り返った。
安心させてあげたいが、抗毒血清が長く保たない以上、余計な口は挟めない。
沙羅は黙して状況を見守る。
「余裕で勝つわボケ雑魚がァ!!毒回ってるくらいの足枷あってトントンなんだよ!!」
「強がってんじゃないわよ!!」
「うるせぇ!人間様をなめんじゃねぇ!!こいつらは全員俺の優秀な“継子”だ!!」
宇髄の言葉が炭治郎達の心を強く打つ。
「逃げねぇ根性がある!!」
伊之助に至っては「フハハ、まぁな!」と胸を張る。
「手足が千切れても喰らいつくぜ!!そしてテメェらの倒し方は既に俺が看破した」