第十話 遊郭
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炭治郎が背後を振り仰ぎ、息を呑む。きっとその視線の先には煉獄の姿があるのだろう。
誰もが心に刻む柱、煉獄杏寿郎。彼の死は防ぐことができたとはいえ、引退を余儀なくさせてしまったことが悔やまれる。
「同時に頸を斬ることだ。二人同時にな、そうだろ!!」
沙羅はいったん瞳を伏せた。ーー今度こそ守ってみせる。宇髄は引退などさせない。
これ以上戦力を削がれてたまるか。
「そうじゃなけりゃそれぞれに能力を分散させて、弱い妹を取り込まねぇ理由がねぇ!!」
ゆっくりと瞳を開いた視線の先に、
「ハァーーッハ!!チョロいぜ、お前ら!!」
あからさまに敵を挑発する宇髄の姿。
「グワハハハ!!なるほどな簡単だぜ、俺たちが勝ったも同然だな!!」
鼻息荒くはしゃぐ伊之助。
しかしその“簡単”なことの、真の難易度を知る沙羅は表情を引き締めた。
柱である宇髄も本当は気付いている。
「その“簡単なこと”ができねぇで鬼狩りたちは死んでったからなあ。柱もなあ、俺が十五で妹が七、喰ってるからなあ」
独特な色彩を帯びた双眸をすうっと細める妓夫太郎。
「そうよ、夜が明けるまで生きてた奴はいないわ。長い夜はいつもアタシたちを味方するから」
声高に嬉々として堕姫がそう言ったと同時、善逸はいち早く攻撃に備えて小さく息を吸い、半歩足を引く。
「どいつもこいつも死になさいよ!!」
堕姫の背後で帯が蠢き無数の刃となって宇髄に振り注いだ。
しかし次の瞬間、素早く善逸が間に入り、閃光のような斬撃が一呼吸で帯を細切れにした。
勢いは削がれることなく、そのまま屋根の穴から突き抜けて、堕姫諸共に夜空へ放たれる。
「善逸!」
彼の身を案じ、炭治郎が叫んだ時、
「蚯蚓女は俺と寝ぼけ丸に任せろ!!お前らはその蟷螂を倒せ!!わかったな!!」
壁の穴から勇ましく飛び出していったのは、伊之助。
「気をつけろ!!」
「おうよ!!」
すかさずその背中に声を掛ける炭治郎。それに応えて伊之助は堕姫と戦うべくこの場を去った。
「妹はやらせねぇよ」
ごく静かな声で妓夫太郎が呟いた時、その口元には怪しい笑みが浮かんでいた。