第四話 慚愧
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塵となって崩れていく菫の身体を、なずなが抱き締めているように見えたのは。
殺人現場まで導いてくれたのは、なずなの亡霊だったように思うのは。
死んで尚、菫の事を傍でなずなが見守っていたのではないかと思うのは。
全ては希望的観測なのだろうかーー
菫の着物を拾い上げて丁寧に畳むと胸に抱き締めた沙羅の耳に、無一郎のくぐもった呻き声が届いて、ハッと我に返った。
「時透殿……!」
慌てて傍に駆け寄り、容態を確認するが、その傷は深く失血も酷い。
どうにも楽観視出来る状況にはなく、いち早く手当が必要だった。
「家へ行きましょう。蝶屋敷より早いですから」
言うが早いか、無一郎の腕を取り、肩に掛けるとその身体を支える。
「立てますか?」
「立てるけど……何で君の家なの」
「ああ見えて母は腕の良い医者ですから」
「え……」
ごぼりと音を立てて渦を巻く水の中に、赤い筋が混じっていた。
沙羅の頬から洗い流された血だった。
広い洗面所の陶器の器に向かい、古風な蛇口から流れ出る冷たい水で顔を洗ったばかりなのだ。
洗面所から廊下へ出ると、母が沙羅を待っていた。
「こっちよ」
廊下を二人歩くと、一つの病室の前で足を止める。
「傷は縫合してあるから、暫くは安静にね。もう大丈夫よ」
「有り難うございます……お母様」
「ふふ。沙羅ちゃんの大切な人だもの。お母さん、頑張っちゃう」
「ふふ……」
「やっと笑ってくれたわね。無理はしちゃダメよ?」
そう言って微笑むと、母親は病室前から去っていった。
沙羅はすぅっと一つの深呼吸の後、病室の扉を三度ノックした。
「どうぞ」
「……失礼します」
そっと引き戸を開くと、無一郎は病室の奥のベッドに横たわっていた。
「何?」
「どうしても疑問で……」
「何が」
「どうして私を庇ったりなんかしたんですか?貴方と私は、もう何の関係もないはずなのにーー」
「僕は」
突然強い口調で遮られ、沙羅は口を噤んだ。
「君を破門した覚えはないし、勝手に出て行った事も許してないから」
「ーー!」
「君は鬼殺隊としては未熟過ぎる。帰ったら容赦なく鍛えるから、覚悟しておいて」
「……私は……」
「何?まだ逆らうの?」
「………っ」
涙目で激しく頭を振る沙羅。
「私には、その資格はありません……っ」