第十話 遊郭
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やにわに妓夫太郎の舌打ちが響く。
「気に喰わねぇなぁ。いい面で、美人な部下がいて、女房も三人いて、それで格好までつけてやがる」
殺意という名の憎悪の籠もった双眸が、宇髄を捉えていた。
宇髄は顔色一つ変えず、静かにそれを見つめ返す。
「お前違うなぁ。今までに殺した柱たちと違う。お前は生まれた時から特別な奴だったんだろうなぁ。選ばれた才能だなぁ。妬ましいなぁ。一刻も早く死んでもらいてぇなぁ」
狂気的な殺意を浮かべて妓夫太郎がそう言った時、
「⋯才能?ハッ」
宇髄はそれを嘲笑った。訝しげに妓夫太郎が眉を顰める。宇髄は続けた。
「俺に才能なんてもんがあるように見えるか?
「お前に何が分かる!?」
憤る堕姫の言葉を遮るように、宇髄は滔々と語った。
「分かんだよ。知らねぇだろ?この国はな、広いんだぜ。凄ェ奴らがウヨウヨしてる。得体の知れねぇ奴もいる。刀を握って二月で柱になるような奴もいる。俺が選ばれてる?ふざけんじゃねぇ。俺の手の平から今までどれだけの命が零れたと思ってんだ」
憤り、語気を荒げる宇髄。その脳裏には、煉獄の姿があるのだろう。
仲間のみならず民間人をも守りきり、決して死者を出さなかった偉大な人。
鬼殺隊士であれば、誰もが彼のようでありたいと切望するのは当然のことだ。
だが、現実は峭刻だ。それは柱である宇髄にとっても例外ではなく、すり抜けていった幾つもの命と今もなお向き合っている。
そんな宇髄の背中が、沙羅の目にはいつもより大きく見えた。
ーー守るんだ、私達で。今度こそ誰も死なせない。
「ぐぬぅう。だったらどう説明する?」
低く唸りながら苛立たしげに自らの皮膚を掻きむしる妓夫太郎。
「俺の“血鎌”は猛毒があるのにいつまで経ってもお前は死なねぇじゃねぇかオイ、なあああ!!」
皮膚を引き裂く不快な音が、辺りに響く。
「俺は忍の家系なんだよ。耐性つけてるから毒は効かねぇ」
宇髄が答える。
「忍なんて江戸の頃には絶えてるでしょ。嘘つくんじゃないわよ」
嘲るように、すかさず堕姫が遮る。
「嘘じゃねぇよ」
忍は存在する。物語を読んで宇髄の過去を知る沙羅は、暗澹とした表情で半ば目を伏せた。
しかし、すぐさま思考を切り替えて、胸ポケットから