第十話 遊郭
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そこから先は、一瞬だった。
宇髄の華やかな額当てから垂れ下がる飾りがばらっと崩れ、額から血が迸る。
その背後で、妓夫太郎は自らの得物である鎌を握り締める。
血液が幾重にもこびり付き、凝固したかのような、異形の真っ赤な鎌だ。
「へぇ、やるなぁあ。攻撃止めたなぁあ」
妓夫太郎がゆったりと振り返る。
「殺す気で斬ったけどなあ。いいなあ、お前。いいなあ」
冷静な面持ちで振り向いた宇髄に、妓夫太郎はねっとりと狂気的な双眸を向けた。
「お前いいなぁあ。その顔いいなぁあ。肌もいいなぁ。シミも痣も傷もねぇんだなあ」
指先でぼりぼりと頭を掻きながら、その視線は隙なく宇髄を捉えている。
「肉付きもいいなぁあ。俺は太れねぇんだよなぁ。上背もあるなぁあ。縦寸が六尺は優に超えてるなぁあ。女にも嘸かし持て囃されるんだろうなぁあ」
妓夫太郎は苛立たしげにがりがりと額を搔く。爪が喰い込み、皮膚を引き裂くが、まるで痛みを感じている様子はない。
「妬ましいなああ。妬ましいなああ。死んでくれねぇかなぁあ。そりゃあもう苦しい死に方でなぁあ。生きたまま生皮剥がれたり、腹を掻っ捌かれたり、それからなぁ」
狂気じみた殺気が膨れ上がる。怖気が止まらない。剥き出しの殺意を湛えた双眸は宇髄のみを見据えているが、沙羅の動向までもしっかりと捉えているのを肌で感じる。
これが上弦ーー
「お兄ちゃんコイツだけじゃないのよ、まだいるの!!アタシを灼いた奴らも殺してよ絶対!!」
泣き喚く堕姫を尻目に、宇髄が沙羅へ声を掛けた。
「行け」
まるで此方の考えを読み取ったかのような言葉に沙羅は驚き、宇髄へ目を向ける。
その間も沙羅は妓夫太郎への注意を切らない。
宇髄もまたその視線は此方へは向いておらず、妓夫太郎を見据えたままだ。
互いに敵への警戒を高めたまま、慎重に会話する。
「この家の人間を全員非難させたいんだろう?」
「はい」
「上弦を前にビビらず冷静な判断ができる。お前なかなか肝が据わってるじゃねぇか」
そう言う宇髄はなぜか嬉しそうだった。後輩の成長を喜んでくれる良い上司なのだろう。
「行け。ここは任せろ」
「必ず戻ります」
沙羅が背を向けた瞬間だった。
「逃さねぇからなぁあ」
ブン、と空気を裂いて赤い鎌が舞う。宇髄が得物を構える。
「俺の可愛い妹が足りねぇ頭で一生懸命やってるのをいじめるような奴らは皆殺しだ。取り立てるぜ俺はなぁ。やられた分は必ず取り立てる。死ぬときグルグル巡らせろ。俺の名は妓夫太郎だからなああ」
くっきりと肋骨の浮き出た痩躯な見た目からは考えられないような、パワーとスピードを兼ね備えた斬撃が、宇髄を襲った。
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