第十話 遊郭
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禰󠄀豆子の蹴りが堕姫を捉える。その威力は甚大。いくつもの民家を突き破り、後方へ弾け飛ぶ。
「禰󠄀豆子ちゃん⋯⋯」
沙羅の声に禰󠄀豆子の視線が此方を向いた。
傷だらけの沙羅を見て、禰󠄀豆子が怒気を纏う。血管が隆起する。
まずい。反射的にそう思った。沙羅の勘は当たっていた。
禰󠄀豆子は唸りながら堕姫の追撃に掛かる。
無数の帯が禰󠄀豆子を襲う。
炭治郎と沙羅の斬撃がそれを防ぐ。
すると次の瞬間、禰󠄀豆子が握り締めた拳に溜まった血液を、堕姫を目掛けて投げつけた。
禰󠄀豆子の血液はまたたく間に燃え上がった。
「ギャアアッ」
炎にトラウマがあるのだろう堕姫が狂乱する。
「禰󠄀豆子ちゃん⋯もういいわ」
追撃に向かう禰󠄀豆子に沙羅の声は届かないようだった。
「禰󠄀豆子ちゃん⋯!」
その時、禰󠄀豆子の嗅覚が、あるものを捉えた。それは人間の血の匂い。
禰󠄀豆子が視線を巡らせた先に、傷を負った女性の姿。震える手で傷を押さえ、怯えきった視線を禰󠄀豆子に向けている。
禰󠄀豆子は葛藤を見せるが、気が昂り暴走した状態では欲望を抑えきれず、女性に飛び掛っていく。
「禰󠄀豆子!!」
炭治郎が懸命にそれを押さえに掛かる。
「だめだ!!耐えろ!!」
ああ、結局はこうなってしまうのか。禰󠄀豆子の暴走は、彼女の優しさの裏返しなのだ。
その優しさゆえに、他人の為に怒りを感じ、優しいゆえに、抱えきれなくて暴走してしまう。
ーー防いであげられなかった。沙羅は自身の力不足を痛感し、ギリっと奥歯を噛み締めた。
「よくもまぁやってくれたわね。そう。血鬼術も使えるの。鬼だけ燃やす奇妙な血鬼術」
部屋の奥からゆらりと堕姫が現れた。
「しかもこれなかなか治らないわ。もの凄く癪に障る。もの凄くね」
美しい顔は無残に焼け爛れ、剥き出した眼球は怒りに血走って此方を凝視している。
沙羅は炭治郎達を庇うように前へと立ちはだかり、静かに刀を構えた。
帯が飛来する。沙羅達を目掛けて、周囲の人間ももろともに生命を刈り取らんと。
だが、次の瞬間。沙羅か攻撃を繰り出すよりも先に、凄まじい速度の斬撃が帯を細切れに斬り裂いた。
「おいこれ竈門禰󠄀豆子じゃねーか。派手に鬼化が進んでやがる」
音もなく現れたのは、音柱 宇髄天元。
「御館様の前で大見栄切ってたくせに何だこの
宇髄はすぐ背後の堕姫をガン無視して、何事もなかったかのように炭治郎を叱咤した。
「柱ね。そっちから来たの。手間が省けた⋯」
薄闇の中、殺意に光る瞳。ワントーン低い声。
背後で膨れ上がる殺気をしかし宇髄はものともせずに、いつもの調子で口を開いた。
「うるせぇな。お前と話してねーよ、失せろ。お前
ここで漸く宇髄が堕姫を振り返る。
「俺が探ってたのはお前じゃない」
怒りに震える堕姫の頸に、ゆっくりと横一文字に赫い線が走る。じわじわと血が流れる。
堕姫は気付いていないのだ。その頸は既に断たれていた事に。
指令塔と切り離された身体が、その意思に反して膝をつく。
ーーそして。
ついに堕姫の頸が落ちたのだった。