第十話 遊郭
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伊之助は焦ってそちらへ視線を振り向ける。帯は倒れている女性達を再び取り込もうと迫っている。
本来なら人質を守りながら戦うべきだったのに、帯を倒す事に集中しすぎて人質の事を失念していた。
「クソォ!!」
素早く踵を返し、そちらへ向かうが、間に合わない。
「蚯蚓帯が!!」
悔し紛れに叫んだ時、伊之助の横を鋭い光がすり抜けた。
気がつけば間一髪、クナイが帯を地に縫い付けていた。
飛んできたクナイの軌道を辿りそちらへ視線を振り向けると、くの一の装束に身を包んだ見知らぬ女性が二人。
「“蚯蚓帯”とは上手いこと言うもんだ!」
一人はハキハキとした物言いが活発な印象を受ける気の強そうな美女で、
「ほんと身持ち悪いです。ほんとその通りです。天元様に言いつけてやります」
もう一人は可愛らしい童顔を半泣きにして訴える、年齢の割に天真爛漫な雰囲気の美女だ。
「あたしたちも加勢するから頑張りな、猪頭!」
迫りくる帯をクナイで捌きつつ活発そうな女性が言う。
「誰だテメェら!!」
伊之助の疑問に答えたのは、童顔の女性。
「宇髄の妻です!アタシあんまり戦えないですから期待しないで下さいね」
確かに彼女は帯を捌きつつも避ける動作も多い。
「須磨ァ!!弱気なことを言うんじゃない」
すかさず活発そうな女性(恐らく彼女が“まきを”だろう)が、目を吊り上げて須磨と呼ばれた女性の背中を張る。
これに対し須磨は半泣きで反論する。
「だってだってまきをさんあたしが“味噌っかす”なの知ってますよね!?すぐ捕まったし」
須磨は半泣きというかいよいよ本泣きで、まきをは須磨を睨んでいて、そんな二人のやり取りを伊之助は少し離れた場所で若干引き気味に眺めるしかできない。
「無茶ですよ、捕まってる人皆守りきるのは!!あたし一番に死にそうですもん」
須磨がそう言った時、
「そうさ。よくわかってるねぇ。さぁ、どれから喰おうか」
帯の声が響く。
あの野郎!!本体じゃねぇだと?ホントだったらやべぇぞ、戦いに終わりが無ぇ。
焦る伊之助をフッと横切る人影があった。善逸だ。
ーー雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃・六連ーー
善逸が大地を抉るように踏み込む。直後、雷鎚のような斬撃が走った。
視界が一瞬閃光に染まり、細切れになった帯が散る。
音もなく着地した善逸が、深く細い息を吐き出す。シィィィと独特な音が鳴る。
善逸の瞼は閉じたままだ。どうやら半覚醒の状態のようだった。
「お前ずっと寝てた方がいいんじゃねぇか⋯」
伊之助が思わず呟いたその横で、善逸に刀を運んだ影の功労者であるムキムキ鼠がガッツポーズをキメていた。
「あの子も鬼殺隊?なんであんな頓珍漢な格好してんの」
「わかんないです」
帯の攻撃を捌きつつ、まきをと須磨。
攻撃の手を緩める事なく帯は思考を巡らせる。
なんなのアイツは、なんて速さ。いやそれよりも今、音が二つ鳴らなかったか?
落雷のような音が重なって二つ鳴った。一つはアイツ。
もう一つは、上からーー
帯が振り仰いだ次の瞬間、凄まじい轟音とともに天井が崩れた。
突如上から感じた風圧に全員の視線がそちらへ集まる。
人面帯の表情が、驚愕に歪む。
風⋯!?風穴が空いたの!?地上から何をしたら
「何だァ⋯?」
興奮した様子で伊之助が視線を巡らせる。
この場にいる全員の視線の向こう、土煙がゆっくりと晴れて、一つの人影の輪郭が露わになる。
巨大な二本の太刀を携えた男の姿。大柄な体格には似つかわしくないほどの繊細な呼吸と、冷徹な視線。
帯が男の正体に気付くと同時、浴びせられた斬撃に、帯は粉々に散っていた。