第四話 慚愧
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菫の家を訪ねると、拒否することなく彼女は出迎えてくれた。
「沙羅さん……。必ず……また来てくれると信じてました」
すっかり血の気の失せた蒼白い顔で微笑む姿が痛々しくて、沙羅はぎゅっと胸が引き絞られるような痛みを感じた。
「上がって下さい」
促されるまま玄関を抜けて、ブーツを脱いで土間に揃えて置くと部屋へと上がった。
「お茶を用意しますね」
入れ替わりで菫が土間の台所へと降りていく。
その姿を目で追いながら、沙羅はあるものを確認する。
大量の灰の積もった囲炉裏、使った形跡のある火鉢ーーこんな時期に。
疑念が確信へと変わり、悲しげに瞳を伏せると、沙羅はきゅっと唇を噛んで顔を上げた。
コトン、そんな沙羅の前に茶が差し出される。
そちらへ目を向ければ、菫と目が合い、互いに力なく微笑みあった。
「何だか大変な事になってるね」
「ええ。でも、犯人は捕まっていますから……幾分かは安心です」
「……そうだね。でもそれが、冤罪だとしたら?」
「え?」
「真犯人は別にいるかもしれない」
「………何が言いたいんですか?」
「単刀直入に言うわ。菫ちゃん……私は、貴女を疑ってる」
「…………」
菫は暫く黙して此方をじっと見ていたが、次には動揺の欠片もない涼しい顔で口を開いた。
「どうしてですか?警察の方にもお話しましたが、私にはアリバイ?……というものがあります。その時間、私は食料の買い出しに出ていました。目撃証言もありますよ」
「そもそも死亡推定時刻が間違っているのだとしたら?」
「…………」
「ここに来る前……遺体を見てきたわ。遺体には不自然な点が幾つもあった。まず、傷口……あれは当初、鋭い爪で引き裂かれた傷だった。それを上から刀で切りつけて、刀傷に偽装されていた」
「だから……何ですか?」
「あの爪の傷……。極めて長い鋭利な爪で引き裂かれた傷口。あれと同じものを、私は以前にも見た事があるわ」
以前熊に襲われた際に、鬼化したなずなに救われた。
「菫ちゃん。貴女ーー」
菫を見詰める沙羅の顔が、今にも泣き出しそうに歪む。
「鬼化してるわね?」