第十話 遊郭
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空は宵に沈み、花街に濃密な灯りがともり始める。
京極屋の店主は自室に籠もり、亡き妻の着物をぼんやりと見つめていた。
血に染まった着物が、妻が陥ったであろう惨状を物語っている。
「善子と雛鶴はどうした。簡潔に答えろ。問い返すことは許さない」
声はすぐ背後から。音もなく、気配もなく、気が付くと突然男が背後に現れた。
喉元に押し当てられたクナイが、部屋の灯りを受けて黒々と鈍い輝きを放っている。
少しでも身じろぎすれば喉が切れる、そんな距離で。
俺も殺されるのかーードッと鼓動が騒ぎ立てる。
「善子は消えた。雛鶴は病気になって切見世へ⋯」
震える喉で必死に応えた。まだ死にたくはない。
「⋯⋯⋯。心当たりのあることを全て話せ。怪しいのは誰だ」
すうっとクナイが喉から離れる。
「信用して言え」
漸く圧迫感から解放されるが恐怖は去らず、荒く乱れた呼吸を繰り返す。
言っていいのか。話せば俺も蕨姫花魁に殺されるのではないか。
「そいつは必ず俺が殺す。仇を討ってやる」
男の声はごく静かだが、力強く耳に響いた。
亡き妻の姿が脳裏に浮かぶ。大切な存在を奪われた慨嘆と守れなかった悔恨に表情が歪み、店主の両目に涙が溢れ出す。
「蕨姫という花魁が、日の当たらない北側の部屋にいる⋯!!」
ふと、空気が軽くなった。圧迫感と殺気が消えたのだ。
急いで背後を振り返るが、部屋には誰もいなかった。
店主から得た情報通り建物の北側、宇髄は沙羅と共に部屋の窓に降り立ち障子を開くが、中はもぬけの殻だった。
いない⋯⋯人を狩りに出ているな。宇髄の瞳が鋭く細まる。
「鬼を探します」
「鬼と遭遇したら可能な限り見つからないよう隠れて待機しろ。俺が駆けつけるまで手を出すな」
「承知致しました」
「死ぬなよ」
「はい」
音もなくその場を離れる沙羅の後ろ姿を見送ってから、宇髄は踵を返し、屋根へ飛び移り、夜闇に紛れて素早く
鬼の気配を探りつつ雛鶴の所へ行こう。まだ生きていれば情報を持っているはすだ。
どの道夜明けには鬼も此処へ戻るはず。
俺の手で必ずカタをつける。
屋根伝いにときと屋へ戻った炭治郎は、その場に漂う濃い甘い香りに鬼の存在を確信する。
「鯉夏さん!!」
勢いよく障子を開けて、窓から部屋の様子を見て絶句した。
「鬼狩りの子?」
暗い部屋に響く女性の甘い声音。
部屋中をまるで意志を持った生物のように蠢く無数の帯。
「来たのね、そう。何人いるの?一人は黄色い頭の醜いガキでしょう。
柱は来てる?もうすぐ来る?アンタは柱じゃないわね弱そうだものね。
柱じゃない奴は
帯に巻き付かれ、締め上げられている鯉夏は、身体の胸元から下が消失していた。
奇妙な事に出血はしていない。血の匂いもしていない。
「私は汚い年寄りと不細工は食べないし」
鬼がゆったりと此方へ顔を向けた。その眼球には左側に“上弦”、右側に“陸”と刻まれていた。
「その人を放せ!!」
すかさず刀を構える炭治郎。
「誰に向かって口を利いてんだ、お前は」
鬼の怒りが膨れ上がるのを感じた、刹那。炭治郎の身体が後方へ吹っ飛ばされて、建物の外壁にめり込んだ。