第十話 遊郭
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約束通り鎹鴉を介して欠かさず届く沙羅の手紙に無一郎は毎日必ず目を通していた。
その手紙の中に、決して無視できない内容を見咎めて、無一郎はすぐさま筆を取った。
単独行動を禁ずる旨を手紙にしたためるが、彼女の性格や思考の傾向、今迄に見てきた行動の傾向を鑑みるにさほど効果はないだろう事を無一郎は既に悟っていた。
諦念から細く息を吐き出すと、細い指で自らの鎹鴉の脚に手紙を結び付ける。
「頼んだよ、銀子」
年格好のわりに大人びた、いや感情がこもっていないだけに子供っぽいとも大人びているともつかない、ぼんやりとした平板な口調が無一郎の普段の口調だ。
しかしこの時ばかりは喉の奥に力を込めて、真摯な声で銀子へ手紙を託す。
銀子は一声高らかに鳴いて、大空へと飛び立っていった。
その姿を暫し見送ってから、無一郎は静かに襖を閉めた。
「沙羅⋯⋯」
尽きない不安が、無一郎の胸の内に黒く翳りを落とす。
障子を開け放した窓から仰ぎ見る青空は皮肉なほど静かで、穏やかな陽射しを零していた。
どうか無事でいてほしい。
必ず駆けつける。必ず迎えに行くから、それまでは。
平生はぼんやりとしている淡い碧色の瞳が強い意志を宿す。
瞳に映り込んだ青空が光を反射して、淡く輝いていた。