第十話 遊郭
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心底申し訳なさそうに少女が言うので、善逸はきりっとした表情で、
「男たるもの、乙女が泣いていたら助けるのは、当たり前だわ」
しかしすぐに自身の失言に気づいて、
「男じゃないけどね!?つまり人間というものはね!?例えば長女とかね!?私長女なんで年下の子が泣いてたらほっとけないじゃない!?普通ね⋯⋯っ」
慌ててわたわたと言い募る。
「そんな事ないよ。ここの人達は、皆自分のことで手一杯だから⋯善子ちゃんみたいな優しい人は初めてよ」
少女達は嬉しそうにきらきらとした純粋な瞳を善逸へ向ける。
善逸は少女達の置かれた境遇に驚き、その悲惨さを憂いた。
「じゃあね、善子ちゃん」
「お大事にね」
「ゆっくり休んでね」
「うん、有り難う」
笑顔で小さく手を振ってくれる少女達に、善逸もまた手を振り返した。
静かに戸が締まる音がする。善逸はほっこりと温かい心持ちで微かに笑みを浮かべた。
その背後に音もなく無数の帯が蠢いている事にも、気付かずにーー
京極屋の楼主の耳にその情報が届いたのは翌日の朝の事だった。
「いなくなった?」
「はい、あの⋯善子なんですけど黄色い頭の。気を失っているのを寝かせていたんですが部屋にいなくて⋯捜させますが?」
「やめろ!!もういい捜すな。“足抜け”だ、俺は知らん!!どこかへ逃げたんだろう、放っておけ!!」
女性の戸惑ったような視線を振り切るように、楼主は文机に伏して算盤を弾く事に集中する。
「でも旦那さん⋯⋯」
まだ何かを言わんとする女性に苛ついた楼主は、算盤を襖に投げつけた。
「黙らねぇか!!下がれ!!」
その勢いに押され、女性は身を縮こませる。
「二度と善子の話はするな!!皆にもそう伝えておけ」
苛立たしげに文机の上の書類をぶち撒ける。
「蕨姫花魁の気に障るようなことをするからだ。善子もお三津も⋯」
女性が見つめる視線の先で、楼主の横顔は何かに追い詰められているかのように辛そうに歪んでいた。