第三話 波紋
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あれから、腕を掴んでも振り解こうともがく彼女の手をしっかりと掴んで。
それならとせめてもの抵抗とばかりに足を止めようとする彼女を引き摺るように歩いて。
半ば強引に霞柱邸へと沙羅を連れ戻した。
何が不満なのか彼女はずっと口をきかないでいる。
外では雨が降り始めていた。
「分かってると思うけど、君は隊律違反を犯した。よって謹慎処分を命じる。暫くの間鍛練と外出は禁止だから」
縁側へと続く障子を開け、畳の上に膝を抱えて座りガラスの向こうに見える雨をぼんやりと眺めていた彼女へ告げた。
「師範は」
それまで頑なに口をきかなかった彼女が、ここに来て漸く口を開いた。
「師範はこの世で何が最も恐ろしいと思いますか?」
かと思えば、訳の分からない事を口にする。
胡乱げに目を細める無一郎をよそに、沙羅は続けた。
「私には鬼なんかよりも、悪意を持った人間の方が余程怖いです」
「鬼より人間が怖い?何を言ってるのかな?」
「悪意を持っているのは鬼も人間も変わりません。鬼なら斬ればいい。……でも、人間相手ではそうはいかない」
そこまで言うと漸く彼女は立ち上がり、此方へ向き直った。
「知っていますか?師範。悪意だけで、人間は人間を殺せるんです」
何を言っているんだろうと思った。
不意に吹いた風でガラス窓がガタガタと鳴った。
「師範の周囲の方達からは、想像もつかないでしょうね。……でも」
どこか諦観を含んだ笑みを浮かべ、沙羅はそっと瞳を伏せた。
「私はそういう世界をたくさん見てきました」
「…………。何が言いたいの」
「私の意見で納得して欲しい訳ではありません。……でも、私は私の意志を曲げる事もしません」
「沙羅」
気が付けば、無意識に彼女の言葉を遮ろうとしていた。
ずっと抑え込んでいた嫌な予感が、じわじわと込み上げてくるのを感じる。
その不安に呼応するかのように、雨が庭石を叩く音が大きくなった。
どうやら本降りになったようだった。
沙羅がフッと微笑む。
「見解の不一致です」
それはどこか諦観を含んだ、それでいてーー
「破門して下さい」
透き通るような純粋な笑みだった。
【大正コソコソ噂話】
夢主の鎹鴉のフルネームは〈鈴仙・
某弾幕シューティングゲームの推しキャラの名前をそのままつけております。
他人の前では〈鈴仙〉と呼び、自分と鴉だけの時や、気を許した相手といる時にだけ〈優曇ちゃん〉や〈優曇華〉と呼びます。