第十話 遊郭
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突如、鬼は女の子の耳を掴み上げた。
「ギャアッ」
尋常ではない力に引っ張られ、その痛みに耐え兼ねた女の子が悲鳴を上げる。
「五月蝿い!ギャアじゃないよ部屋を片付けな!」
苛立たしげな鬼の怒号が部屋へ響く。
「ごめんなさい、ごめんなさい、すぐやります許してください⋯!!」
泣き叫ぶ女の子の耳が千切れかけ、流れ出た血がその顔を伝う。
善逸が、渾身の力でその腕を掴んだ。
「⋯⋯⋯。何?」
蔑むような冷ややかな瞳で、鬼が善逸を睨み下ろす。
しかし、善逸は怯むことなく鬼を睨み返した。
「手、放してください」
鬼は不快感も露わに善逸に言った。
「⋯⋯何だって?もう一回言ってみな」
静かな声音が、いっそう不気味だった。
「手、放してください」
同じ言葉を繰り返す善逸を睨み据えて、
「よく見るとさらに不細工だね」
善逸の手をいとも簡単に振りほどき、
「そのお前が、私にーー」
よろけた善逸の顔面へ拳を振り抜いた。
善逸は勢いのままに幾つも部屋の扉をぶち破り、倒れた。
「気安く触るんじゃないよ。のぼせ腐りやがってこのガキが」
鬼の怒声に少女達は怯えきり、身を縮こませる。
「躾がいるようだねお前は。きつい躾が」
鬼が善逸のほうへと足を向けた時、
「蕨姫花魁⋯!!」
騒ぎを聞きつけ駆けつけた楼主が、その場に膝をついて深く頭を下げた。
「この通りだ、頼む。勘弁してやってくれ。もうすぐ店の時間だ、客が来る⋯。俺がきつく叱っておくからどうか今は⋯。どうか俺の顔を立ててくれ」
暫し沈黙が降りる。重い沈黙。
「入ってきたばかりの子に辛くあたり過ぎたね。手当してやって頂戴」
振り向いた鬼はーー蕨姫花魁は、にこりと乾いた笑顔を見せた。
「旦那さん、顔を上げておくれ。私のほうこそご免なさいね。最近ちょいと癪に障ることが多くって」
サッと踵を返した蕨姫花魁は、禿の少女達に冷たく言い放つ。
「支度するからさっさと片付けな」
「はっ⋯はい⋯!!」
「はい⋯」
少女達は慌てて返事をして、片付けにかかる。
「人を呼べ、早く片付けろ!!蕨姫花魁の気に障る事をするんじゃねぇ!!」
騒然する廊下を無視して悠々と部屋へ戻った蕨姫花魁は、思考を巡らせる。
あのガキ、この感触からすると軽症だね。失神はしているけれども。
受け身を取りやがった。一般人じゃない。
鬼殺隊なんだろう。でも柱のような実力はない。
蕨姫花魁は上機嫌に今やすっかり片付いた部屋で自慢の美貌に化粧を施していく。
「少し時間がかかったけど上手く釣れてきたわね。どんどんいらっしゃい。皆殺して喰ってあげる」
唇へ引いた紅を小指の先で整えながら、鬼が嗤った。