第十話 遊郭
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その一方で京極屋に潜入している善逸は、半ば放心したような面持ちでトボトボと廊下を歩いていた。
なんか俺自分見失ってた⋯⋯。俺は宇髄さんの奥さん“雛鶴”さんを探すんだったよ。三味線と琴の腕を上げたってどうしようもないだろうよとちょっぴり反省。
しかしながら先程からずっと聞き耳を立てているが、“雛鶴”の情報はいっこうに入ってこない。
噂では二日前に楼主の妻が
善逸は憂鬱な気分になりながらも少しでも情報を得るべく、集中して耳を澄ませた。
「アレとってアレ」「帯がないのよ」「もうおなかすいたわ」「髪結さん来た?」⋯⋯その時、女性達の声に紛れて微かに女の子の啜り泣く声を、善逸の耳が鋭く捉えた。
「一大事だ。女の子が泣いている」
泣き声を辿り、声のするほうへと急ぐ。目的の部屋は程なくして見つかった。
そっと障子を開くと、酷く荒れ果てた光景が目に飛び込んで、狼狽した善逸は、
「ちょ⋯、めちゃくちゃなんだけどどうしたの?この部屋!」
おろおろと女の子へ向かって叫んだ。
驚いた様子で振り返った女の子は、黒目がちの瞳いっぱいに涙を溜めて、かわいそうに殴られでもしたのか頬を腫らし髪は乱れて、何だかぼろぼろだった。
「えっ、けんっ、喧嘩した!?大丈夫!?」
ついいつもの調子で矢継ぎ早に問い詰めてしまい、女の子はついにわっと泣き出してしまった。
善逸は動揺しながらも、女の子へ寄り添う。
「大丈夫?ねぇ⋯、落ちついて?君を怒ったわけじゃ⋯ないのよ。ごめんね、何か困ってるなら⋯」
刹那、背後に感じた気配に心臓がドクッと厭な音を立てた。
「アンタ人の部屋で何してんの?」
突然背後に現れた人物から聞こえる音は、鬼のそれだ。
戦慄が走る。無意識にごくりと喉が嚥下する。冷汗が肌の表面を伝い、手が震える。
今、背後にいるのは鬼だ。人間の音ではない。声を掛けられる直前まで気付かなかった。
音が静か過ぎて逆に怖い。恐怖から呼吸が浅く乱れていく。
背後の鬼は、⋯⋯恐らく上弦。上弦の鬼に背後を取られている。
「オイ、耳が聞こえないのかい」
何も答えない善逸に苛立ちも露わに鬼が吐き捨てるような口調で詰った。
「わ⋯蕨姫花魁」
「その人は昨日か一昨日に入ったばかりだから⋯」
部屋の入り口で少女が二人、善逸のためにおずおずと進言してくれる。だが、
「は?だったら何なの?」
冷ややかに睥睨されて、恐怖のあまり少女達はその場にへたり込んだ。
「勝手に入ってすみません!部屋がめちゃくちゃだったし、あの子が泣いていたので⋯」
善逸はすかさず少女達を庇うように鬼の注意を自身へと引き付ける。
「不細工だね、お前。気色悪い⋯死んだほうがいいんじゃない?
何だい、その頭の色!目立ちたいのかい?」
鬼が吐き捨てる言葉は辛辣で、ショックやら呆れるやらで善逸は白目を剥いて固まった。
「確かに部屋はめちゃくちゃのままだね。片付けとくように言ってたんだけど」