第十話 遊郭
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「遊女さんはいらっしゃいませんが、そのお客様はよくいらっしゃいますよ」
料亭は格式高い店だ。噂好きでフラットな定食屋とは違って、客のプライベートな話題を聞き出すのは容易な事ではない。
しかし宇髄が敢えてこの店を選んだ理由を沙羅は心得ていた。
庶民にはなかなか敷居の高いこの店を、気軽に利用できるということは、間違いなく富裕層。
相手取る遊女も花魁格だろう。沙羅は世間話も交えつつ誘導尋問でうまく情報を聞き出していった。
「最後に遊郭について怪談めいた噂などはありませんか?」
「怪談めいた噂⋯⋯」
「都市伝説の域で構いません。事実だけではなく、そういうお話も交えると盛り上がるので」
「そうですね。そういえばーー」
この女将さんからも“不審な遊女”の噂を聞き出すことができた。
これでより強固に宇髄に印象づけることができただろう。
「有り難うございました。授業で良い発表ができそうです」
「それはよかった」
宇髄はもう少し話を訊きたそうにしていたが、それは沙羅が止めた。
「そろそろ帰りましょう。天元様」
「⋯⋯ああ」
店を後にし、人通りの少ない街を二人並んで歩く。
「やけにあっさり引くじゃねぇか。地味にもう少し聞き出せただろ」
「あれ以上は怪しまれる可能性が出てきます。あの女性にも危険が及ぶかもしれません」
「引際ってやつか」
「そういうことです」
宇髄は隣を歩く沙羅に目をやる。
「着替えて来いとは言ったが⋯⋯
怪訝そうな視線を向ける沙羅に、宇髄はにやりとした笑みを浮かべて。
「俺が用意させた着物じゃなく、時透が用意したそれをわざわざ着てきたわけだ」
ニヤニヤと意地悪そうな笑みで見下ろしてくる宇髄に、居心地の悪さを感じた沙羅は、
「何が言いたいんです?」
声色を低くして宇髄を睨めつける。
宇髄はそれすらも楽しげに笑って言った。
「時透に会えなくて寂しいか?」
これに対し沙羅は睨むのを止めて、ポーカーフェイスで再び歩き出す。
「時々は着てやれと仰ったのは貴方です」
「素直じゃねぇな」
くつくつと喉の奥で笑う宇髄を、沙羅は半眼で見やり。
「お互い様では?」
冷めた声音で言い放つ。
「どういう意味だよ?」
訝しげに片眉を上げる宇髄。
「炭治郎くん達のあの化粧。貴方は文句を言っていましたが、変に客に見初められたり、水揚げが早まったりしないための配慮でしょう?」
「⋯⋯地味に気づいてやがったか」
「当然です」
「可愛くないねぇ」
「それで結構です」
これ以上この話を続ける気はないので、沙羅は話題を切り替えた。
「姫という名を好んで使う花魁⋯⋯怪しいのは京極屋の蕨姫花魁ですね」
「ああ。それは俺のほうで調べる。お前は予定通り新たな技を編み出す事に専念しろ」
「承知致しました。既に構想はあります。そう時間は掛けません」
「へぇ?」
興味深げに宇髄が片眉を上げる。
宣言通り構想はあった。霞の呼吸 参ノ型 霞散の飛沫に着想を得た素早い回転斬り。
直線的に弾丸を斬る他の技とは違い、はるかに技術を要するだろうそれを、必ずものにしてみせる。
決意を胸に沙羅は鋭く宙を睨んだ。