第十話 遊郭
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「京極屋の女将さん窓から落ちて死んじゃったんだって」
「怖いね、気を付けようね」
「最近は“足抜け”していなくなる姐さんも多いしね」
「怖いね」
顔を寄せ合って囁き合う少女達。
「“足抜け”って何?」
無邪気に問う炭子(仮)に少女達は驚いた様子で振り返る。
「すごい荷物だね」
「鯉夏花魁への贈り物だよ」
「炭ちゃん、知らないの?」
「“足抜け”っていうのはねぇ、借金を返さずにここから逃げることだよ」
「見つかったらひどいんだよ」
「そうなんだ⋯⋯」
「好きな男の人と逃げきれる人もいるんだけどね」
「こないだだって須磨花魁が⋯」
少女が言いかけた言葉を、炭子(仮)は聞き逃さなかった。
須磨。宇髄さんの奥さんだ。
「あの⋯」
詳しく訊こうとした時、襖から一人の女性が現れた。
この部屋の主である鯉夏花魁だった。
「噂話はよしなさい。本当に逃げきれたかどうかなんて⋯誰にもわからないのよ」
柔らかな雰囲気を纏う鯉夏花魁はその美貌を愁いに沈ませて、少女達を優しく窘めた。
「はぁい」
少し不満げながらも素直に返事をする少女達。
鯉夏花魁は炭子(仮)へ目を向けて、
「運んでくれたのね。有り難う。おいで」
傍に寄った炭子(仮)の手を取ると、そこにそっと包みを置いた。
「お菓子をあげようね。一人でこっそり食べるのよ」
包みがほどけて中から艶々とした水晶飴玉が現れる。
「わっちも欲しい!」
「花魁、花魁」
お菓子をせがむ少女達を、さっき食べたでしょと嗜める鯉夏花魁の姿は、まるで母親のような慈愛に満ちていた。
「あの⋯“須磨”花魁は足抜けしたんですか?」
その柔らかな雰囲気に油断して、単刀直入に尋ねてしまったが、鯉夏花魁達の纏う空気が不信と警戒の入り混じったものに変わったので、炭子(仮)は内心焦った。
「どうしてそんな事を訊くんだい?」
目立たぬよううまく須磨の情報を聞き出さなければいけない。
考え倦ねた炭子(仮)は、
「ええと⋯、須磨花魁は私の⋯私の⋯、姉なんです」
炭子(仮)の告白に、衝撃を受けたように固まる鯉夏花魁と少女達。
生来正直者である炭子(炭治郎)は、嘘をつく時普通の顔ができない。
とても辛そうに歪んだ表情が、しかしこの場合は逆に話に信憑性を持たせたらしかった。
「姉さんに続いてあなたも遊郭に売られてきたの?」
「は⋯はい。姉とはずっと手紙のやりとりをしていましたが、足抜けするような人ではないはずです」
「そうだったの⋯⋯」
特に疑われる事なく信じてもらえたようだった。
ほっと肩の力が抜け、漸くもとの表情へ戻る炭子(仮)。
「確かに私も須磨ちゃんが足抜けするとは思えなかった。しっかりした子だったもの。男の人にのぼせている素振りもなかったのに、だけど日記が見つかっていて⋯それには足抜けするって書いてあったそうなの。
捕まったという話も聞かないから、逃げきれていればいいんだけど⋯」