第十話 遊郭
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その頃の伊之子(仮)は化粧を剥がされ、その美貌を荻本屋の人々の前に惜しげもなく晒していた。
「どうよ、これ!!」
「きゃーーっ、すごい!」
「変なふうに顔を塗ったくられていたけど、落としらこうよ!!すごい得したわこんな美形の子安く買えて!!
仕込むわよォ、仕込むわよォ。京極屋の“蕨姫”やときと屋の“鯉夏”よりも売れっ子にするわよォ」
ガッツポーズで拳を天井へ突き上げて、張り切る荻本屋の遣手さん。
「でもなんか妙にこの子ガッチリしてない?」
伊之子(仮)を連れる女性から困惑気味な意見が上がるが、
「ふっくらと肉付きが良い子のほうがいいでしょ!」
野望に燃える遣手さんの耳には届かず。
「ふっくらっていうかガッチリしてるんだけど⋯」
そんな意見が店に虚しく響いていた。
一方でその頃の善子(仮)は、京極屋で三味線による無駄に超絶技巧な演奏を披露していた。
「あ⋯あの子三味線うまいわね」
「そうね⋯すごい迫力」
「最近入った子?」
「耳がいいみたいよ。一回聞いたら三味線でも琴でも弾けるらしいわ」
「でも不細工よねぇ⋯⋯」
「よく入れたわねお店に⋯⋯」
演奏の迫力が増すにつれ、善子(仮)の表情も壮絶なものになっていく。
遠巻きに観覧する女性達は引き気味だった。
「あの子連れてきたのがもんのすごいいい男だったらしいわよ」
「ホントに?見たかった!」
「遣手婆がポッとなっちゃってさ」
宇髄の話題が持ち上がった途端、きゃっきゃと盛り上がる女性達。
そんな中、一人の女性が口を開いた。
「アタイにはわかるよ。あの子はのし上がるね」
煙管をふかしながら、確信に満ちた不敵な笑みを浮かべ女性は善子(仮)を眺めて言った。
「自分を捨てた男を見返してやろうっていう気概を感じる。そういう子は強いんだよ」
「そ⋯そうなんだ⋯⋯」
女性の意見はピンゴである。善子(仮)は復讐心(?)に満ちていた。
脳裏に浮かぶのはへらへらとした愛想笑いを浮かべて、善子(仮)の頭をぞんざいにべしべし叩く宇髄の姿。
言うに事欠いて、便所掃除でも何でもいいんで貰って下さいよォ。いっそタダでもいいんで、こんなのは、だと。許せん。
見返してやるあの男⋯!!アタイ絶対吉原一の花魁になる!!
自身の性別など忘れ去って本来の目的などもはや地平線の果てにぶん投げて、復讐心に燃える善子(仮)であった。
最後にときと屋の炭子(仮)だが、彼はさすがというかその素直な性格が幸いして、ときと屋にすっかり馴染んでいた。
「炭子ちゃんよく働くねぇ」
「白粉をとったら額に傷があったもんだから、昨日は女将さんが烈火の如く怒っていたけど⋯」
「はい!働かせてもらえてよかったです」
両手にそれぞれ山積みの荷物を軽々と抱えて危なげもなく歩いていく炭子(仮)の後ろ姿を眺める女性達。
「なんか⋯⋯⋯力⋯強くない?」
「強っ」
そんな声を背後に聞き流しながら、鯉夏花魁の部屋へ荷物を届ける炭子(仮)の耳に、ひそひそと囁き合う少女達の声が入り込んできたのだった。