第三話 波紋
夢小説設定
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いつも天真爛漫で、表情がくるくるとよく変わる彼女からは想像つかないような重く沈んだ表情でなずなは振り向いた。
「お姉ちゃんには言わないで……」
「何故?」
「怖がらせたくないの」
「じゃあ交換条件。一つ質問に答えてくれる?」
「なぁに?」
「それだけ強いなら、村の人達も簡単に殺せるはず。
・・・・
なのに貴女はどうして人を食べないの?」
「…………」
不躾な問い掛けだが鬼殺隊としてそれは必要な尋問だった。
そうーー彼女はただの一度も人間を捕食していない稀な鬼であったのだ。
その力がない訳でもないのに、だ。
暫く黙して彼女は口を開いた。その声は僅かに震えていた。
「……私、人なんて食べたくない」
「!」
「誰も傷つけたくない。それに……、私はお姉ちゃんのご飯が好きなの。お姉ちゃんのご飯が食べたいよ」
「なずなちゃん……」
驚いた。鬼舞辻無惨以外の鬼の思考のベクトルは、一律だと思っていたから。
しかし彼女は違うのかもしれない。
「分かった。言わない」
「!」
「ほら、あそこにお花が咲いてる。とびきり綺麗な花冠を作って菫ちゃんにプレゼントしよう?」
「有り難う!沙羅お姉ちゃん!」
やっと笑ってくれた。その事にこんなにも安堵するなんて。
自分はきっと、この姉妹に情が移ってしまっている……。
それは鬼殺隊としてはあるまじき行為だと自覚をしながら、沙羅はそっと瞳を伏せた。