第十話 遊郭
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女装三人組を前に沙羅は思う。実際に実物を目にして見ると、迫力すら感じる不細工具合だな、と。
ここまでする必要があるのだろうか。
三人とも顔立ちは決して悪くない(伊之助に至ってはかなりの美形の部類に入る)のに。
「あのー、音柱様」
「何だ」
「三人のお化粧、私がやり直しましょうか?」
軽く挙手をしながら提案をしてみるが、
「ああ、コイツらはこれでいいんだよ」
腕組みをして三人を見下ろしながら文句を言う宇髄からは、予想通りの言葉が返ってくるだけだった。
やはりそうかと一人納得しながら、沙羅もまた着替えを持って別室へ。
沙羅の変装のために用意されたのは、どことなく洋装めいた着物だった。
真っ青な綸子に百合の意匠が込められた染めの着物は、程よくレースやフリルがあしらわれている。
ふんだんにレースのあしらわれた撫子色の織の帯を立て矢結びにし、平組の帯締めとパールの帯留を合わせ、白のケープコートを羽織った姿。
その着こなしは華やかで美しく、沙羅によく似合っていた。
そんな沙羅を眺めて、宇髄は珍しく歯切れの悪い様子で言った。
「あー⋯、お前はいいわ。俺の指示があるまで此処で待機しろ」
「何故ですか?」
「いいんだよ、それで」
それでは何のために着替えたのか。非常に納得がいかないが、宇髄にそう言われたのでは、
「承知致しました」
こう答えるしかない。
「俺の指示があるまで、絶対に遊郭へは来るな。いいな?」
念には念を押すように釘を刺して宇髄達は出掛けていった。
⋯⋯本当に、何のために着替えたのだか。
一人ぽつんと部屋に残された沙羅が、所在なさげに正座をして待っていると廊下から耳慣れた足音が聞こえてきた。
まさかという思いでそちらを注視すると、スッと襖が開く。
そこへいたのは予想通りの人物で、しかしその人物がここに来たのはあまりにも想定外。沙羅は驚愕のあまり目を瞠った。
「師範、何故ここに⋯⋯」
霞柱、時透無一郎。その表情は相変わらずぼんやりとして見えるが、それでもどことなく不機嫌そうに首を
「行くよ」
「え⋯⋯」
「潜伏先へは僕が送る」
言うが早いか無一郎は踵を返す。
「待って下さい。音柱様の指示により、私はここを動くなと言いつかっています」
「僕が送り届けるから問題ないよ」
「そうは仰いますが、潜伏先はご存知なのですか?」
沙羅の問に無一郎が此方を振り返る。
「知ってるよ。遊郭でしょ」
昏く沈んだ瞳で答える無一郎に沙羅は息を詰めた。その時漸く、彼の怒りの正体に気付いたのだ。