第十話 遊郭
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こうして話は冒頭へ。強い怒りを露わに此方を見つめる無一郎を前に、沙羅もまた無一郎を静かに見つめ返した。
「なぜそんなにお怒りなのでしょうか?」
「わからないの?」
沙羅の問いに無一郎は眉を顰める。
「残念ながらわかりません」
顔色一つ変えない沙羅を、無一郎は睥睨して。
「それぐらい自分で考えなよ。赤ん坊じゃないんだから」
その語調は相変わらず抑揚を欠いており声音は低く、蔑むように冷ややかな目を向けてくる。
平生はぼんやりとしてまるで覇気が感じられないが、こういう時の無一郎は知っている間柄でもやはり怖い。
決して若さを侮らせない凄みがあるのだ。
「師範」
無一郎が何に対してここまで怒りを感じているのかはわからないが、ここで手をこまねいている時間はない。
「たとえ反対されたとしても、私は行きます」
その瞳をまっすぐに見つめて、はっきりと沙羅は告げた。
「僕は君の直属の上官だよ。その命令に」
「逆らいます」
「⋯⋯⋯⋯。どうしてそんなにこの任務に拘るの?」
無一郎の問いに対し沙羅はいったん瞳を伏せて熟考し、慎重に言葉を選んで口を開いた。
「今回の任務⋯⋯潜伏先に潜む鬼は、恐らく上弦です」
「その根拠は?」
「潜伏先はここ数百年の間鬼が巣食っているものと推察されます。
その間鬼殺隊士も派遣されていたはず。さらには元忍でもある音柱様が直々に動いていたにも関わらず尻尾を掴ませないその狡猾さと隠密性。犠牲者の数も相当なものだと聞きます」
「⋯⋯⋯⋯」
「どうか冷静なご勘案願います」
無一郎は半ば睫毛を伏せて、どことなく表情を曇らせる。此方の身を案じてくれているのだと、伝わる。
ーーしかし、それでも。
「私はこの戦いで霞柱時透無一郎の継子として必ずお役に立ちます」
沙羅は無一郎をまっすぐに見据える。
「上弦を撃破し、貴方を守れる存在になってみせます」
無一郎は暫し黙してじっと此方を見つめていたが、やがて。
「⋯⋯わかった」
瞳を伏せて、静かに言った。
沙羅の表情に安堵が浮かぶ。
「但し一つ条件がある」
しかしすかさず釘を差されて、沙羅の顔に再び緊張が戻った。
そんな沙羅に無一郎が言い渡した条件は。
「欠かさず毎日手紙で報告をあげる事。それが条件だよ」
これに対し沙羅は決意を湛えた瞳で答えた。
「承知致しました」
気をつけて、と気遣いの言葉をくれる無一郎だが、その実淡い碧色の瞳を昏く沈ませて、沙羅をじっと見つめていた。