第九話 華鬼と鏡屋敷
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有須沙羅は時透無一郎を守る。
ーー全身全霊を以って。
たとえその代償に、この命を差し出す事になったとしても。
時透無一郎には必ず幸せになってほしい。
だからこそ、その想いに応えるわけにはいかない。
もしも沙羅が戦いの中で命を落としてしまったらーーその時は沙羅の事を忘れて別な誰かと幸せになってほしい。
死んで尚、沙羅の存在が、無一郎の心を引くわけにはいかないのだ。
「……温かいね、沙羅」
囁くようにそう言って、無一郎は徐々に眠りに落ちていく。
その姿を目に灼き付けるように、じっと見つめる沙羅。
……胸が苦しい。
募る思慕に、今にも張り裂けてしまいそうで、うまく息もできない。
ーーしかし、それでも。
「貴方は私が守ります。絶対に死なせない」
想いを心の奥底へ押し込めて、沙羅は決意を口にした。
そうして長い夜は更けていく。
優しい温もりに包まれて、沙羅と無一郎は深く眠った。
そうするうちに徐々に空が白んで、山際に光が射していく。
夜露に濡れた木々がキラキラと木漏れ日を零し、薄灰色の樹影を引き摺って、洞穴に差し掛ける。
夜が明けて早々に起床した沙羅達は、乾かしていた隊服を、きっちりと着込んだ。
それはまだ少し湿っていたが、着ているうちに乾くだろう。
無一郎がぼんやりとした表情に薄く笑みを滲ませて、此方へ向かって手を差し出してくる。
「帰ろう、沙羅」
沙羅もまた仄かな笑みを返して、その手に自身のそれを重ねた。
【大正コソコソ噂】
沙羅のお父さんは無一郎くんを大変気に入っており、娘を嫁に行かせる気満々です。
もしも無一郎くんが誘拐なぞされようものならば、なりふり構わず助けに向かう事でしょう。
↓ちょっと想像してみました↓
沙羅が母親と話していると、⋯⋯カ゚シャリ、ガシャリと廊下から謎の物音が。
⋯⋯ガシャリ、ガシャリ。
物音は徐々に部屋へ近づいて来る。
ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ。
そちらを注視すると、おもむろに襖が開く。
現れたのは紛うことなき沙羅の父親だったのだが、その扮装は一言でいうと異様、だった。
「お父様。その格好は一体⋯⋯」
戦国武将の如く鎧を着込んだ、何とも物々しい父親の姿。しかもその両手には、何故か鎧には不釣合な出刃包丁を握り締めている。
「無論、無一郎くんを助けに向かうのだ!!」
「落ち着いて下さい」
「これが落ち着いていられるか!無一郎くんはお前と結婚するのだ!!何処の馬の骨ともわからん輩に渡してなるものか!!!」
「師範は必ず私が助け出してみせます。お父様は待っていて下さい。危険です」
「危険なら尚更だ!大事な娘をそんな場所へ向かわせる訳にはいかん!儂が行く!!」
「大丈夫よ、沙羅ちゃん。お父様はね、殺しても死なないタイプの人だもの」
「⋯⋯⋯⋯」
駄目だ、この人達。お話にならない。
「離すのだ、沙羅!時間がない!」
「時間がないのはお父様のせいです」
「何を!!」
「とにかく待っていて下さい」
父親の説得には小一時間掛かった。
「沙羅!!無一郎くんを必ず取り戻してくるのだぞ!!」
「承知致しました」
「必ずだぞ!!信じておるぞーーーーーッ!!!」
父親の声はいつまでも沙羅の背を追いかけてきたという。
⋯⋯あんまり、信用されてないような。