第九話 華鬼と鏡屋敷
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無数に襲い来る錐のような梢を避けながら、沙羅は機会を窺う。
鬼は上機嫌な様子で高みの見物を決め込んでいる。
「私ね、人間が好きよ。男も女も分け隔てなくね。人間てとっても諦めが悪いの。全部無駄な事なのに、死ぬまで足掻き続けるの。なんて愚かなのかしら」
梢を避け、斬撃を繰り出す沙羅を眺めて、鬼は狂気じみた笑みの形に目を細めた。
「可愛いわぁ」
口元を覆った袖の下で、可笑しそうにクスクスと嗤う。
「ねぇ、知っている?毒に侵された女の肉は、とっても柔らかくって、甘くって、美味しいの。
男の肉は硬くて嫌い。女の肉が私のご馳走なの。早く貴女を食べたいわ」
鬼の双眸に沙羅の姿が映り込む。
「さぁ、お遊びはもう終わりよ」
芝居がかった仕草で、鬼が両手を広げた。
ーー血鬼術・
極彩色の無数の花弁が刃となって舞い、沙羅達に襲い掛かった。
「とっておきの毒を貴女にあげる」
鋭い剃刀のような花弁を避けながら、沙羅は無一郎を見た。
無一郎もまた此方を見つめており、力強く頷く。
沙羅もまた頷き返した。
ーー宵の呼吸 伍ノ型 弾幕 神楽ーー
剣閃が奔り、それは重なり合って五角形を描いた。刹那。
薄紅色の弾幕が剣閃から四方へ散り、それは花弁の刃を灼き斬り、梢の錐を燃やした。
「ひっ、……火が!!いやぁーーーっ!!」
自らの美貌を燃やした炎を思い出しでもしたのか、鬼が怯んだ。
その視界の端に、毛先に掛けて淡い碧色に透ける長く美しい黒髪が舞った。
鬼が驚愕に目を見開く。その瞳に、素早く懐に潜り込み刀を構える無一郎の姿が映り込む。
ーー霞の呼吸 肆ノ型 移流斬りーー
下から上にかけての、鋭い一閃。その一閃が、鬼の頸を両断した。
鮮血を撒き散らしながら、鬼の首が飛ぶ。
顔色一つ変えず、涼しい顔をしている無一郎の姿を視界に捉えながら、鬼の瞳が紅く血走る。
「おのれ……」
鬼の首が畳の上を転がった。
ほっと安堵の息をつき、捕らわれた女性達の解放にかかる最上。
無一郎は倒れた鬼の胴を、沙羅は切断された鬼の首を、それぞれ確認をする。
「………許さない」
鬼の唇が低く言葉を紡いだ。沙羅はハッとして、咄嗟に無一郎の身体を渾身の力で突き飛ばした。
鬼の髪が剃刀のように、つい先程無一郎が立っていた場所を、激しく抉った。
最後の悪足掻きだったのだろう、直後鬼は灰燼となってそのまま消え去った。
「沙羅!!」
沙羅はバランスが取れず、完全に体勢を崩して広縁の窓を突き破り、
ーー落ちる。
崖下へ向かって真っ逆さまに落下する。
「沙羅!!」
何の迷いもなく、無一郎は後を追って飛び降りる。
宙で沙羅の身体を捕まえ、強くその腕に抱き込んだ。
「有須さん!!!柱ーーーーッ!!!」
窓から崖下へ向かって叫ぶ、最上の声が辺りに響き渡った。