第九話 華鬼と鏡屋敷
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最上の絶叫が、部屋中に響き渡った。
「おまっ……、有須さん、何してんだ!?気でも狂ったのか!?」
すっかり狼狽し、腰を抜かして此方をバケモノか何かでも見るみたいな目を向けてくる最上に、沙羅はごく冷静な声で言った。
「落ち着いて下さい。偽物です」
その言葉を裏打ちするかのように、首を斬り落とした時透無一郎の身体が徐々に灰燼となって、崩壊し始める。
目を白黒させながらも漸く少しずつ状況を理解し始める最上。
「に……、偽物……」
「これを見て下さい」
崩れていく時透無一郎の傍にしゃがみ、沙羅がその右手首を示した。
「何だこれ……」
「ミサンガといいます。見ての通り師範はこれを着用している。
こういったものは通常、利き手とは逆の手に付けます。付ける際に利き手を利用するからです。
ですがこの師範は」
「右手に付けてるな」
「ミサンガの模様も左右が反転しています」
「うぇ、よくそんなの気づいたな」
相変わらずどんな観察力だよ。最上のバケモノを見るかのような視線は変わらなかった。
しかし沙羅は意に介さず、紫檀の飾り棚にぽつんと置かれた朱塗りの手鏡を睥睨した。
ーー宵の呼吸 参ノ型 伽藍の薄闇ーー
すかさず手鏡に向けて鋭い刺突技を繰り出す。
刀身は鏡を突き抜けて、鏡が白く罅割れた。
そして次の瞬間、部屋の風景が一変した。
気がつくと、部屋の中あちこちで見知らぬ女性達が倒れていた。
そしてーー
「沙羅……!」
鏡の中へと攫われたはずの無一郎の姿もそこにあった。
「こ、今度は本物、……か?」
先程の事もあり警戒する最上に、沙羅は力強く頷いてみせた。
「師範、ご無事で何よりです」
務めて冷静に振る舞おうとしたが、僅かに声が震えてしまった。
どうしようもない安堵感から、目尻に少しだけ涙が滲んだ。
「せっかく集めた獲物を」
ふいに背後で響いた声音に、一瞬にして場に緊張が戻った。
無一郎達がいっせいに視線を向けるが、鬼はそれを一切気にした風もなく、その足元に転がる
すかさず無一郎が刃を振るうが、鬼はそれをひらりと避けて、
「駄目よ、返さないわ」
何処からともなく伸びてきた黒髪で、再び女性達を絡め取った。
「この子達は私の一部になるの」
先程の拗ねた表情とは打って変わって、楽しげな顔で鬼はくすくすと微笑う。
「この子からは艷やかな爪を。この子からは細くてしなやかな両腕を。この子からは形のいいふっくらとした唇を。そしてーー」
鬼の視線が沙羅の方を向く。
泣きぼくろのある垂れ目ぎみの瞳を細めて妖艶に微笑う。
「貴女からはその綺麗な瞳と脚を頂くわ。そうすれば、私はまたよりいっそう美しくなれる。
その後貴女達は美味しく食べてあげるわね」
ーー血鬼術・
甘い匂いが強まった。
刹那、先の鋭く尖った梢が無数に沙羅達に襲い掛かった。
「ふふ、逃げるのお上手。でも気をつけて。捕まったら痛い目に合うわよ」