第九話 華鬼と鏡屋敷
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ーー2、迷い家の手鏡
無一郎は伏せていた瞼をゆっくりと開いた。
そこは何の変哲もない部屋の中で、そして異様に静かだった。
否、静かというより無音。一歩を踏み出すが、やはり音がしない。
無一郎は辺りを見渡す。当然、沙羅達の姿はない。
障子を開けて外へ出ると、妙な事に気づいた。
玄関口から鬼の背後に見えていた風景と、今見えている風景は、左右が反転している。
廊下を挟んで右に障子、左に硝子戸が見えていたはずだが、今見えている景色では逆だ。
やはり此処は正しく鏡の裏の世界なのだろう。
早々とそう結論づけると、無一郎は屋敷の探索を始めた。
今無一郎がするべき事は、人質を見つけ出す事。
曲がり角の多い廊下を進みながら、注意深く辺りを観察する。
屋敷の奥の奥まで躊躇う事なく深く入り込んでいく。
ふと、一つの部屋の前で人の気配を感じた。
何の迷いもなく障子を開け放つと、中には異様な光景が広がっていた。
まず目に入ったのは、長い長い黒髪。
硝子戸から射し込む月灯りに照らされて、何処となく緑色を帯びて見える長い黒髪が、部屋中にびっしりと蔓延っていた。
そして、人。
女性しかいないが、雁字搦めに髪に絡め取られて数人の女性が眠らされていた。
全員まだ息がある事を確認し、無一郎は静かに刀を構えた。
ーー霞の呼吸 弐ノ型 八重霞ーー
薄暗い部屋に蒼白い剣閃が
女性達は無事だ。酷く衰弱している事を除けば、傷一つない。
改めて部屋の中を見渡す。
その時、視覚が違和感を捉えた。
何がおかしいのか一瞬分からず、もう一度慎重に部屋の中を見渡して、違和感の正体を確信した。
繊細な細工の施された紫檀の飾り棚。そこに立て掛けるようにぽつんと置かれた朱塗りの手鏡。
おかしいのは、その手鏡に映る風景だ。
鏡とは光の反射を利用して、顔や姿をうつし見る道具だ。
その為そこに写る風景は通常、左右が反転して見える。
だが、この鏡はどうだ。
左右が反転する事なく、
この屋敷は部屋という部屋の家具が左右対称に配置されているため気付きにくいが、確かにこの鏡に映る風景は、左右が反転していない。
それは向こう側ーー
そう確信した瞬間、無一郎は刃を振るった。
ーー霞の呼吸 壱ノ型 垂天遠霞ーー
鋭い突き技が、手鏡を捕らえた。
だが、どういう訳か手鏡には傷一つつかない。
恐らく何らかの特別な力が働いているのだろう。
そうだとすれば、この術を破るためにはこちら側と、向こう側が、同時に手鏡を攻撃する必要があるのではないか。
ーー可能性は高い。
「……沙羅」
気づけ。否、彼女ならばきっと気づくはずだ。
沙羅を信じて、無一郎はもう一度技を繰り出した。