第九話 華鬼と鏡屋敷
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深く息を吐き出し、落ち着いて屋敷の中を観察すると、そこに広がる光景は、まさに“異様”の一言に尽きていた。
曲がりくねった廊下を、沙羅は最上とともに進んだ。
廃屋と噂されていた割には掃除が行き届いており、塵一つ落ちていない。
障子を開け部屋を一つ一つ確認していくと、この屋敷の奇妙さが際立っていった。
屋敷の中は至る所に鏡台や姿見など夥しい数の鏡があった。
それだけでも充分に異様だが、各部屋の光景をさらに異様たらしめているのは、家具の配置であった。
座卓や書棚や飾り棚、そして鏡。どの部屋もそれらのすべてが、部屋の中心から完璧に左右が対称になるよう配置されているのだ。
「何か、気味が悪いな……」
思わずそう零す最上の額を冷汗が伝う。
沙羅もまた同じ感想を抱きながらも注意深く辺りを観察していた。
「……見つけた」
ふいにぽつりと沙羅が言った。何を、と最上が問う前に沙羅がスッと迷いなく一点を指差す。
その先を視線で追うと、そこには繊細な細工の施された紫檀の飾り棚があるだけだった。
これが一体何だというのだろうか。そう思いながらもその棚を観察してみた。
棚にはぽつんと朱塗りの手鏡が一つ、立て掛けるように置かれているだけで、手鏡の他には何も置かれてはいなかった。
見れば見るほどただそれだけの光景に、戸惑いながら沙羅の方へと視線を戻す。
沙羅は鋭い瞳で飾り棚ーー正確には手鏡を見据えたまま微動だにしない。
戸惑いがさらに大きくなった、その時。
「沙羅、最上」
背後の障子が開き、そこから時透無一郎が姿を現す。
「柱、ご無事でしたか!」
最上が歓喜の声を上げた。時透無一郎はゆっくりとした足取りで此方へ近づいて来る。
柱と合流した。もう大丈夫だ。その絶対的な安心感から思わず破顔する最上の横で、沙羅は何故だか眉を顰めていた。
「君達も無事みたいだね」
「はい!」
「人質が捕らえられている場所を見つけたよ」
「え!もうですか、流石ですね!」
「こっちだよ」
促されるまま最上がついて行こうとした、しかし次の瞬間。
信じ難い光景を目にする。
ーー宵の呼吸 壱ノ型 逢魔時ーー
鋭い一刀が、時透無一郎の頸を刎ねたのだ。
最上の目の前で、血飛沫をあげながら両断された首が宙を舞う。
知らずのうちに、最上は声を張り上げ叫んでいた。