第二話 齟齬
夢小説設定
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スタン、と襖が勢いよく開かれ、現れたのはーー
「師範……!何故、ここに……」
沙羅が思わず声を漏らすと、碧色の瞳が此方を向いた。
女性と見紛う端麗な顔には相変わらず殆んど表情がないが、それでも何処か不機嫌そうに影を落としているのが分かる。
「師範、どうし……」
「帰るよ」
「え」
「君の帰りが遅いから、迎えに来たんだんだ」
「待って下さい、師範………痛い。師範、流石に痛いです」
「ごめん……」
強引に連れ帰ろうとした結果、手首を強く握りしめ過ぎていたらしい。
無一郎が手を放した、その瞬間あっけに取られていた両親がハッと我に返ったようで、父親の方が無一郎へズンズンと歩み寄っていく。
頼むから変なことは言わないで欲しい。
そんな沙羅の内心での願いも虚しく。
「ふむ、君が沙羅の主なる者かな?」
「主?何の事かな?」
「お父様。一応そうなります」
「そうか、そうか!君があの“ふろふき大根の君”であったか!」
心底嬉しそうに破顔する父。……をよそに、ふろふき大根の君って何?と、我が父ながら謎すぎる思考回路に心底ゾッと戦慄する沙羅。
「末永く娘を頼んだぞ!」
「そのつもりで迎えに来たんだんだよ」
「ハッハッハッ!これは頼もしい!」
「良かったわねぇ、沙羅ちゃん」
一連のやり取りを眺めていた沙羅の脳裏に真っ先に浮かんだのはこの言葉だったが、これ以上話がややこしくなるのは嫌なので敢えて口を噤んでおいたのだった。