第二話 齟齬
夢小説設定
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「お父様はね、沙羅ちゃんに幸せになって欲しいのよ。だから沙羅ちゃんのお相手になる殿方も、お見合いの申込みが来ても、その中から厳選して沙羅ちゃんに勧めているのよ?沙羅ちゃんは小さな頃から旬になるとふろふき大根を狂ったように毎日作り続けていたでしょう?私達はね、きっとそのふろふき大根が好物な人が沙羅ちゃんの運命の人だと考えたの」
「お母様……」
至極朗らかに微笑む母の顔を見つめながら、沙羅が口を開く。
「それで何故イカ大根なのですか?」
「家柄も人柄も申し分なくて、ふろふき大根が好物な殿方が、どうしてもみつからなかったのー」
うふふーと可愛らしく小首を傾げるお母様。
沙羅は一つ溜息をついて、
「ご心配をお掛けして申し訳ありません。それと……有り難うございます」
畳に三指をついて丁寧に頭を下げた。
「しかしながらお二人には申し訳ありませんが、私は生まれながらにして戦いに身を投じる運命にあります」
顔を上げ真っ直ぐに二人を見据える沙羅。強い意志を宿した瞳がそこにはあった。
「ふろふき大根は、私の仕えるべき主の好物だったのです」
「まぁ……!」
「何と……!」
母親は驚いた様子で口元に手をやり、父親は目を丸く見開いていた。が、暫くして、
「相分かった」
父親が神妙な顔つきでそう言って、
「して、その主とやらは良き殿方なのか?」
次の瞬間には嬉々としてそんな事を訊いてきた。
あ・ダメだコレ全然分かってねぇやつだ。
大概にしろオヤジという言葉が喉元まで出かかって何とか飲み込んだ時だった。
「あの、困ります!」
廊下から女中さんの困惑したような声と、スタスタと何処か聞き覚えのある軽やかな足音が聞こえてきた。