第八話 無限列車
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先頭車両へ辿り着くと、そこには既に沙羅がいた。
強い風にも微動だにせず、車両を見下ろしている。
「沙羅!!ここにいたのか!!」
傍へ駆け寄り、沙羅が浮かべるその表情に、一瞬ぞくりとした。
白面に浮かぶのは、冷酷な表情。
顔立ちが綺麗なだけに、より凄みが増す。
「ここか」
伊之助もまた車両を見下ろし、激しい斬撃を繰り出す。
「オォリャアア!!」
飛散した屋根が風に流れて炭治郎達を襲う。
沙羅はスッと身を開いて躱し、炭治郎は咄嗟に身を伏せて、それを躱した。
「怪しいぜ、怪しいぜ、この辺りは特に!!」
刀を構える伊之助に、狼狽した汽車の運転手が叫ぶ。
「何だお前は、でっ、出ていけ!!」
しかし伊之助は聞いておらず、一点のみを見つめて刃を振るわんと刀を構えた。
「鬼の頸、鬼の急所ォオオオ!!」
刹那、肉塊が無数の手を象って伊之助へ急迫した。
「キモッ!!!」
咄嗟に応戦するが、一瞬の隙を突かれて捕らわれる。
「しまっ……!」
しかし次の瞬間、
ーー水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦ーー
ーー宵の呼吸 弐ノ型
炭治郎と沙羅の放った斬撃に、間一髪のところで肉塊が飛散した。
鬼の悲鳴が辺りに響き渡る。
「伊之助、大丈夫か!」
「お前に助けられたわけじゃねぇぞ!!」
「わかってる!」
炭治郎がしゃがみ、床を凝視する。
これは……真下だ。
この場の真下、鬼の匂いが強い。
「この真下に鬼の頸があるわ」
冷え切った瞳で床を見下ろして、沙羅もそう言った。
「伊之助!!この真下が鬼の頸だ!!」
「命令すんじゃねえ!親分は俺だ!!」
「わかった!」
「見てろ」
ーー獣の呼吸 弐ノ牙 切り裂きーー!!!
斬撃に肉塊が飛散し、頸の骨が露出する。
巨大な骨だ。禍々しい雰囲気を纏っている。
ーー水の呼吸 捌ノ型 滝壺ーー!!!
すかさず斬撃を繰り出すが、肉塊が素早く骨を覆い防がれてしまう。
息つく間もなく肉塊がその場にいた全ての人間に襲い掛かる。
炭治郎は運転手を抱え、安全な場所へ飛ぶ。
振り返れば、頸の裂け目はあっという間に塞がれて、肉塊が今にも攻撃せんと臨戦態勢をとっていた。
再生が早い。渾身の一撃で骨を露出させるのが精一杯だ。
しかし骨を絶たなければ意味がない。
その時、冷静な声で沙羅が言った。
「アシストは私に任せて。君達は鬼の頸を斬って」
その声音はあまりにも静かで。それは炭治郎の心を幾分落ち着かせた。
「わかった」
力強く頷く炭治郎。
「伊之助!!呼吸を合わせて連撃だ!!どちらかが肉を斬り、すかさずどちらかが骨を断とう!!」
「なるほどな!!いい考えだ、褒めてやる!!」
「有り難う!!」
二人同時に刀を構え、地を蹴った、次の瞬間。
ーー強制昏倒睡眠・眼ーー
魘夢の血鬼術が二人を襲った。
「伏せて」
静かかな声音とともに白い手が優しく炭治郎の背中を押さえ付けた。
ーー宵の呼吸 伍ノ型 弾幕 神楽ーー
薄闇に剣閃が閃いた。刹那、剣閃から薄紅色の弾幕が四方へ散る。
それは夜桜から舞い散る花吹雪の如く美麗で、夜空に映えて、炭治郎の視線を奪い去った。
そして見蕩れていたのは炭治郎だけではない。
動きを止めた無数の鬼の瞳。その一瞬の隙を突いて、弾幕は無数の瞳を片っ端から一つ残らず潰していった。
鬼の悲鳴が車両を揺るがした。