第一話 誓約
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その日の鍛練もやはり有須 沙羅は休憩を一切取ろうとしなかった。
休憩を言い渡しても、結局は道場に残って宵の呼吸の型を休む事なく練習していた。
痺れを切らした無一郎は仕方なく、折を見て彼女を気絶させ、強制的に休ませてはみたが……。
しかし彼女は目を覚ました瞬間に斬りかかってくるのだ。
一体何が彼女をここまで突き動かしているのだろう。
そんな事を繰り返すうちに学習したのか、程なくして彼女は防御を取るようになってきた。
理解や反応が早い。此方の意図は既に読まれている。
やはり戦闘の才能は申し分ないのだろう。
それならばーー
ビシッ……!と、竹刀がしたやたかに彼女の手首を打ち据えた。
「っ……!」
沙羅の顔が一瞬苦痛に歪み、それでも取り落とした竹刀をすぐさま掴もうとその手を伸ばす。
しかしーー
「無駄だよ」
頭上で響く静かな声音にピクリと沙羅が反応した。
「手が痺れてるでしょ。暫く刀は持てない筈だよ」
淡々と事実を告げると、彼女は不満げに此方を睨んでくる。
「おいで。少し話がある」
道場から出て暫く歩くと、そこは中庭へと続いていた。
黄昏時の空の下、植栽や灯籠などが仄かに浮かび上がり、まるで一枚の絵画のような佇まいだった。
その美しさに沙羅は漸く身体の中の張り詰めていた空気を解くように、一息吐く。
「君は……」
不意に無一郎が口を開いた事で、沙羅の中に再び緊張が戻った。
「君はさ、何をそんなに焦っているのかな?」
それは沙羅にとっては思ってもみなかった言葉だった。
「焦る?」
「焦ってるよ」
「そうでしょうか……」
「そうだよ」
指摘されて初めて「そう言われてみれば、そうかも……」と考え込んでいると、更に無一郎が、
「焦った所で人は急には強くなれないよ。休息も大事な修行の一環なんだ」
至極まっとうな、優しいともとれるような事を諭してきたので、失礼ながら少し(いや大分)意外に思いながら沙羅は慎重に口を開く。
「そうですね……でも、のんびり過ごしていても強くもなれません。……時間は有限ですから」
「因縁の敵でもいるの?」
「…………。いません」
「嘘つき。君の修行への執着の仕方は尋常じゃない。因縁の敵がいるとしか思えない」
「いませんってば」
「じゃあ何で有限なの」
「………………」
質問が多いな!尋問みたい!
ギリィ……と思わず歯軋りしかけた沙羅だったが、次の瞬間無一郎が言い放った言葉に目を見開いた。