第八話 無限列車
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“精神の核”を破壊する。魘夢のこの計画は難航していた。
ある者は暗い洞窟で巨大化し凶暴化した伊之助に追い回され、ある者は据わった眼差しで巨大な鋏を振り回す善逸に追い回されている。
また煉獄を狙った少女は、危機を察知した煉獄に首を絞め上げられ、両者それ以上は動けず膠着状態。
「……手こずってるなぁ。まだ誰の“核”も破壊できてないじゃないか」
つまらなそうに魘夢が呟く。
「…………。まぁ
その頃の沙羅は未だ夢の中にいた。
周囲に気取られぬよう視線のみで辺りを探るが、首を切り落とせそうな刃物はない。
どうする……。自問していると、
「夕莉子姉ちゃん?」
萌々が不思議そうな面持ちで此方を見ていた。
その隣には、萌々の婚約者である宮村洋治がにこやかに父と雑談している。
「高校を卒業したら萌々さんと結婚するつもりです」
少し緊張気味に顔を紅潮させて、真摯な眼差しで彼は言った。
浮気性な元彼とは違い、彼は真剣に妹の事を考えてくれているのが伝わってくる。
父も母も妹達も皆幸せそうだ。
これが私の夢見た世界……。
魘夢……。他者の弱みにつけ込む事のみならず、無遠慮に心の底まで覗き見て、悪戯に土足で踏み荒らす。
ーー許さない。
「夕莉子姉ちゃん、どうしたの?もしかして怒ってるの?何か……顔怖いよ?」
戸惑い気味に隣の絵梨花が声を掛けてくる。
「そうだね……怒ってるよ」
沙羅は極静かな声音で答えた。
「どうして……」
次の瞬間、沙羅の視界が赫く染まった。
周囲から悲鳴が上がる。
ーー燃えているのだ、沙羅の全身が。
「ーーこれは」
沙羅の全身を包む紅蓮の炎。禰󠄀豆子の血鬼術だ。
容姿が変わる……茶色の髪は亜麻色に、黒い瞳は徐々に淡く蒼色に透き通る。
服装も変わる。淡い色味のワンピース姿から凛々しい漆黒の隊服姿へ。
腰にはしっかり佩刀している。
沙羅は立ち上がると、迷うことなく自らの首筋に刃を突き立てた。