第一話 誓約
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本日の朝食のメニューは、長ネギと豆腐の味噌汁、ふっくらと炊かれた白米、大根おろしとカボスの添えられた鯵の塩焼き、小松菜のお浸し、胡瓜の揉みづけ。
まずは味噌汁の香りを堪能する。味噌のいい香りとネギの香りが食欲を刺激した。
一口啜ると無一郎の作った味噌汁は、出汁の効いた優しい味がした。
よく煮込まれた長ネギはトロトロで、熱々の味噌汁が水風呂で冷え切った身体に染み渡るようでーー推しの手料理ともあり沙羅はダブルの意味で感動を噛み締めた。
「お味噌汁美味しいです。師範は料理がお上手ですね」
「そうでもないよ」
「いいえ。お上手です」
「君ほどじゃないから」
「え」
「君こそ、料理が上手だね。最初に食べた時……正直驚いた」
「そうですか?有り難うございます。うちの母はもっと上手ですよ」
「そうなの?」
目を丸くしてる様が可愛らしくて、沙羅は思わずくすりと笑みを漏らす。
「はい。残念ながら習っている途中で家を飛び出してしまったのですけど……」
半眼を伏せて飛び出した家の事に想いを馳せていると、
「君は……」
不意に声を掛けられて思考が中断させられた。
そちらへ目を向けると、淡い碧色の瞳が真っ直ぐに沙羅へと向けられていた。
「君は何で家を飛び出してまで鬼殺隊に入ろうと思ったの?」
それは師としては当然の疑問なのかもしれないが、非常に答えづらい。
「君の修行のやり方はまるでーー」
どうするよ、沙羅どん。まさか本当の事を暴露する訳にもいくめぇし。
と、自問自答しながらも表面上はポーカーフェイスを保つ沙羅だが。
「まるで因縁の鬼でもいるみたいだよ」
どんどん核心に迫られて、内心は冷や汗ダラダラである。
さて、どう答えたものか。考えて倦ねていると、
「まぁ、答えたくないならいいけど……」
そう言って無一郎は何事もなかったみたいに味噌汁を啜った。
全身からホッと力が抜けて、沙羅は安堵の息を吐く。
その様子を無一郎は目線のみで捉えていたとも知らずに。