第八話 無限列車
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沙羅もまた魘夢の思惑通り依然夢の中にいた。
「夕莉子姉ちゃん、覚えてる?前にミルクチョコブラウニーでビターチョコの生チョコを挟んだお菓子一緒に作ったでしょ?今度はそれの逆バージョン作ろうよ」
末の妹である絵梨花が嬉々として語りかけてくる。
沙羅はそれを半分上の空で聞いていた。
「表面に溶かしたチョコと砕いたナッツを散らして、ケーキみたいにして。ほら、萌々姉ちゃんが結婚するじゃない?そのお祝いに、皆でティーパーティーしようよ」
絵梨花は心から嬉しそうで、沙羅は眩しそうに瞳を細めた。
「……絵梨花は本当に萌々が好きだね」
沙羅の言葉に絵梨花は一瞬きょとんと目を見開いて、
「な⋯なぁにー?急に⋯。そんなの当たり前じゃん」
もじもじしながらも頷く絵梨花。はにかんだ笑顔が可愛らしい。
その笑顔が本当に幸せそうで、沙羅はそっと俯いた。
その様子を物陰に隠れて見つめる一人の少女がいた。
「何よ、あの女……見た目がさっきと全然違う。どういう事なの?」
少女は魘夢により放たれた侵入者だった。
沙羅はその気配に気づいていたが、敢えて無視していた。
「そ、そんな事はどうでもいい……早く“精神の核”を見つけて破壊しなきゃ……!」
少女はこっそりとその場から離れた。
外へ出ると、見慣れない街並みが広がる。
圧倒されるほど高く聳える四角い箱のような建造物の群れ、硬く舗装された濃灰色の道、凄まじい速度で走行する四角い箱のような鉄製の乗り物には、危うく轢かれかけた。
見たことがない物ばかりだ。空気もなんだか埃っぽい。
「本当に、どうなってるのよ……!」
半ばやけくそ気味に呟いて、“夢の端”を探す。
眠り鬼魘夢の見せる夢は無限には続いていない。夢を見ている者を中心に円形となっている。
夢の外側には無意識の領域があり、無意識の領域には“精神の核”が存在していて、これを破壊されると持ち主は廃人となる。
「あった……!壁だわ」
景色は続いているが、まるで透明な壁を隔てたようにそれ以上先へは進めない。
少女は迷うことなく帯に潜ませていた
布を裂くような音を立てて、景色を切り裂く。
ふわり、と温かな光に包まれたのも束の間、すぐさま頑強な鎖に行く手を阻まれた。
「何これ……っ」
鎖は幾重にも折り重なっており、足の踏み場もない。
それでも何とか隙間を縫って、“精神の核”を探す少女。
「あった……!きっとあれだわ!」
確信はない。何故ならそれは鎖が何重にも鎖が巻き付いて、鎖の塊と化しているからだ。
しかしその鎖の塊は、この無意識領域を包むものと同じ光が隙間から零れている。
少女はそこに飛びついて、鎖をときにかかった。
手を血だらけにして、必死に鎖を引き剥がす。
「何よ……!なんでこんなに……っ」
鎖を解けば解くほど、理由のわからない悲しみが押し寄せて、少女の心を追い詰めた。
「こいつの心……っ、なんでこんなに雁字搦めなのよ!」
鎖さえなければ、この無意識領域はどんなに美しかっただろう。
柔らかくて温かい、透き通った光に満たされていたはずなのに。
「どうでもいい……!早く“精神の核”を……ッ」
「そこで何をしているの?」
声は背後から、唐突に響いた。
振り返ったと同時に、突如首筋に衝撃を感じた。
薄れゆく意識の中で視界に映ったのは、間違いなく自身が縄で繋いだあの子で。
一体どういう事ーー?
少女の意識はそこで途絶えた。