第八話 無限列車
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ーー2、振り切れる怒り
こぽり……。
泡の音がする。
深く青暗い水底に沈んでいく。
ふと気がつくと、父の部屋にいた。微かに風鈴の音が聞こえる。
何をしにここへ来たのかと一瞬疑問に思い、すぐさま柱に昇格した事を父親へ報告に来たのだと思い至る。
煉獄は嬉々として柱になった事を父に伝えた。
だが、それに対する父の答えは。
「柱になったから何だ」
煉獄の表情が凍りつく。
「くだらん……どうでもいい。どうせ大したものにはなれないんだ。お前も俺も」
声音はどこまでも投げやりで冷ややかで、父は此方を見向きもしなかった。
父の部屋を退室し、廊下を行く煉獄の前に弟である千寿郎が現れる。
「父上は喜んでくれましたか?俺も柱になったら、父上に認めてもらえるでしょうか?」
弟の瞳は純粋な期待と希望に満ちていた。
父は、昔からああではなかった。鬼殺隊で柱にまで上り詰めた。
情熱のある人だったのに、ある日突然剣士をやめた。突然。
あんなにも熱心に俺達を育ててくれていた人が、なぜ。
ーー考えても仕方がない事は考えるな。
千寿郎はもっと可哀想だろう。物心つく前に病死した母の記憶はほとんどなく、父はあの状態だ。
煉獄は千寿郎の前に膝をつき、目線を合わせて静かな声音で切り出した。
「正直に言う。父上は喜んでくれなかった!」
千寿郎の表情が悲しげに曇る。
「どうでもいいとの事だ。しかし!そんな事で俺の情熱はなくならない!心の炎が消える事はない!俺は決して挫けない!
そして千寿郎、お前は俺とは違う!お前には兄がいる。兄は弟を信じている」
千寿郎の手を取り、その目をまっすぐに見つめて煉獄は言った。
「どんな道を歩いてもお前は立派な人間になる!燃えるような情熱を胸に!」
千寿郎の瞳に涙が溢れる。
「頑張ろう!頑張って生きていこう!寂しくとも!」
千寿郎が抱きついてくる。煉獄はそれをしっかりと受け止め、強く抱き締め返した。
「縄で繋ぐのは腕ですか?」
「そう。注意された事を忘れないで」
魘夢の手下の少年少女達が、それぞれの手首を縄で繋ぎ始める。
それは繋いだ相手の夢の中へと入り込むための儀式だった。
深くゆっくりと呼吸をし、数を数える。
少年少女達もまた眠りへと落ちていく。
星が輝く夜空の下、汽車の走行は止まらない。
先頭車両の屋根の上で魘夢は悠然と歌うように一人語る。
「ねんねんころり。こんころり。息も忘れてこんころり。鬼が来ようとこんころり。
楽しそうだね。幸せな夢を見始めたな。深い眠りだ。もう目覚める事はできないよ」
魘夢の言う通り、煉獄達は皆夢の中だ。
月が憂うように僅かばかり翳りを帯びた。